氷の紳士を愛したら [マリー・フェラレーラ]
SHALOCKMEMO348
「氷の紳士を愛したら(キャバノー家の真実5) The Strong Silent Type 2004」
マリー・フェラレーラ Marie Ferrarella 新号友子
(Cavanaugh Justice series)。
原題の"Strong Silent Type"を「氷の紳士」とする邦題タイトルは,とても気が利いているがちょっと固いように思う。ただ,この“ハンサムで寡黙な”タイプのヒーロー,ジャック・ホーキンズ(愛称ホーク)は,ヒーローもののデテクティヴストーリーやポリスストーリーにはよく出てくるタイプ。本作はラブストリームらしくクロスオーバー的に刑事物とロマンス小説の見事な合体と仕上がった作品となっている。今月のおすすめ。
さて,本作のヒロインはテリー。テリーのパートナーとなったのは「ハンサムで寡黙な刑事」ホーク。ある捜査で踏み込んだビルで銃撃を受け,テリーは負傷する。ここで,ホークの本来のやさしさが現れる。冷徹に見えるホークだが実は熱いハートをもっているという伏線が十分現れている。しかし機関銃のように容赦ない口調で話すテリーを寡黙なホークはたえられなくなっていくが,テリーに惹かれる想いの方をもてあましてしまい,パートナーの解消を上司に頼む。しかし,パートナーを解消されたテリーはふてくされず,ホークが自分の殻に閉じこもってしまうのを解きほぐし,キャバノー家の朝食に招くのに成功する。この朝食会はキャバノー家の家族愛を示す部分だが,これまでのシリーズの中で語られてきたところだろう(これまでのシリーズの作品は未読)。
さらに冒頭でも登場するサイドストーリー,行方不明の妻のローズを発見しながらも,訪問を拒絶され(現在はクレアと名乗っている),そのことをなかなか家族に言いだせずにいるアンドリュー。クレアの記憶は戻り,家族の元に返ってくるのだろうか。それは本作では結論は見えてこず,次作へと興味を引いていく。著者フェラレーラのストーリーテラーとしての仕掛けのうまさか。シリーズ作家の本領発揮というところだろうか。
そしてもう一つ,表紙カバーのホークにお姫様だっこされているテリー。しばしば登場するモデルだが,この角度が最も愛らしさを表しているのではないだろうか。もちろんUK版とは左右逆転しているが。
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