夜が来る前に [クレア・デラクロワ]
SHALOCKMEMO353
「夜が来る前に My Lady's Desire 1998」
クレア・デラクロワ Claire Delacroix 上木さよ子
HQB-69/07.02/\720/381p
クレア・デラクロワのヒストリカルロマンス,サイェルヌ3部作の一つ。 SHALOCKMEMO259の「夜は甘く妖しく My Lady's Champion 1996」では「帰国したクインは大領主テュレのお館様に呼び出され,隣接するアノシーの女領主メリサンド・ダノシーと祝言を挙げ,跡継ぎが生まれたらサイェルヌ,アノシー両方の領主にすると持ちかけられる。自分の領地を再建することのみ考えていたクインは結婚はずっとさきの話だと思っていたし,メリサンドにしても自分が領地を治めることを認められると思っており,二人は互いに反発しあう。しかしテュレのお館様の策略から,その夜二人は婚礼をあげることになってしまう。
あとは,二人の気持ちが次第に明らかにされ,しかもすれ違いを時々みせるため,周囲はお似合いの二人と思っていても互いの気持ちを寄せ合うことは最後の最後までない。
聖地でクインの命を救い,ともに帰国した騎士のバヤール,メリサンドの侍女で気の強い娘のベルト,敵役で以前はメリサンドの婚約者だったアルノー・ド・プリヴァなど配役は出そろい,それぞれに個性を十分発揮している。」と書いている。
本作でも,テュレのお館様,クイン,メリサンドらが顔を出すが,ヒーローはクインの異母弟イヴ。ヒロインはペリコーの前領主の未亡人ガブリエル,そして一粒種トーマ。敵役はペリコーを奪取したトルヴェーヌの領主フィリップ・ド・トルヴェーヌと裏切り者の傭兵セムール・ド・クレシー。
誠実さや騎士道,言葉に与えられた重みなど,現代社会が失ってしまった人として大切なことが十分に描かれている好著。特にガブリエルの女性としての芯の強さが光る一作。
コメント 0