消えた子爵夫人 [アン・アシュリー]
SHALOCKMEMO363
「消えた子爵夫人(「華麗なる貴族たち」所収) Lady Linford's Return 1997」
アン・アシュリー Anne Ashley 古沢絵里
これもちょっと前に読み終わっていたもの。SHALOCKMEMO356の続編。いわゆる花嫁消失もの。六年前に夫人レイチェルが失踪し,社交界では妻殺しの暗い噂が飛び交っていたリンフォード子爵。父親に甘やかされて育った子爵は“自己を抑制すること”や領地の経営に伴う責任などに気づく前に16歳の花嫁を娶り,レイチェルは夫を恐れるあまり逃げ出してしまったのだった。逃亡先で偶然であったすばらしい教師に深い愛情を持ってマナーを学び,身分を隠してリンフォード子爵の伯母のもとを訪れるところから物語は始まる。
それにしても,いくら身分を隠しているとはいえ,自分の妻が何色の髪をしていたのか瞳をしていたのかが思い出せない夫の存在は,貴族社会だからこそあり得るのだろうか。夫が妻に気づくのはいつになるのかで読者の興味を引いていくのではなく,物語中半で気づいた後にどのように二人の気持ちが寄り添っていくのかを描くのがロマンスの醍醐味。本作の場合は特にそれがうまく描かれている。途中のさまざまな出来事はお約束だが,子爵の伯母レディ・ヘンリエッタ(ヘッタ)や家政婦のリットン夫人など興味深いキャラクターを配し,探偵スタッブスが真相を暴いていくなどミステリの要素も十分堪能できる佳作。
それにしても,いくら身分を隠しているとはいえ,自分の妻が何色の髪をしていたのか瞳をしていたのかが思い出せない夫の存在は,貴族社会だからこそあり得るのだろうか。夫が妻に気づくのはいつになるのかで読者の興味を引いていくのではなく,物語中半で気づいた後にどのように二人の気持ちが寄り添っていくのかを描くのがロマンスの醍醐味。本作の場合は特にそれがうまく描かれている。途中のさまざまな出来事はお約束だが,子爵の伯母レディ・ヘンリエッタ(ヘッタ)や家政婦のリットン夫人など興味深いキャラクターを配し,探偵スタッブスが真相を暴いていくなどミステリの要素も十分堪能できる佳作。
2007-03-18 13:27
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