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異国の子爵と月の令嬢 [クリスティーナ・ドット]

SHALOCKMEMO393
異国の子爵と月の令嬢 Rules of Surrender 2000」
クリスティーナ・ドット 細郷妙子





スーザン・マレリーの”アラビア・ロマンス3部作”の舞台がエル・バハールという架空の国。私は続編のバハニア王国編しか読んでいないので,ピンとこなかったが,ロマンスの世界では,常識なのだろう。それだとすると,2人の作家が同じ架空の国を想定していることになるが,これってイイの?
本書の著作年は2000年,スーザン・マレリーの”アラビア・ロマンス”の著作年も2000年となると,どちらも偶然同じ国名を思いついたことになるが,この辺の事情に詳しい方は是非お知らせください。
さて,このエル・バハールで艱難辛苦を経た後ウィンターを救ったのがベドウィンのバラカという族長。バラカを父のように慕い,その人生観をすっかり受け入れた子爵は,砂漠に国の男性観,女性観に凝り固まっている。長男,長女を伴ってイギリスに帰郷したものの,上流階級には受け入れられない,つまりイギリス流のマナーを実践できないことに悩んだ子爵の母,アドーナは孫共々,息子のマナーも見てもらおうと家庭教師のシャーロット・ダルランブルを雇うことにする。こちらが,本作のヒロイン。これまでの教え子たちにも”きちんと先生”と呼ばれていたようにシャーロットはまさにイギリス・マナーの完璧な実践家。二人の子供たちもすぐになつき,順調に友人たちと立ち上げた家庭教師派遣会社の経営にも潤いをもたらす講師料を得たと喜んだのはつかの間,ウィンター卿はあえて,マナーを否定し,シャーロットを脅かす。二人のマナー観をめぐる虚々実々の駆け引きが前編を通じて面白い。ただ,たいした事件もないのにマナー論争が繰り広げられるのに若干中だるみを感じる読者もいるだろう。誠実さと,傲慢さ,率直さ,愛することと自己犠牲など,いろいろな価値観をどう押さえていくかを考えさせられる本作は,あまり若い人向きではないのかもしれないが,伝統的な教養小説の流れをくむものといえるのかもしれない。
奔放な考えを持つ子爵の母アドーナを想い続けるバックネル卿や,自分勝手ではあるが,家族には忠実なシャーロットの叔父など,脇役に至るまで登場人物をきっちりと描き分ける見事さは,帯にあるように「ロマンス界の大物作家」と呼ぶにふさわしい作品になっている。

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