理想の花嫁 [サマンサ・ジェイムズ]
SHALOCKMEMO428
「理想の花嫁 A Perfect Bride 2004」
サマンサ・ジェイムズ Samantha James samanthajames.com 松井里弥
ナポレオン戦争後の時代,ロンドンの裏町で育った娘デヴォン・セントジェイムズと,自らの才覚で侯爵家の身代を立て直し,弟・妹の面倒を見続けている真面目で理想的な生活を送る長男の独身男,セバスチャン・スターリングのヒストリカル・ロマンス3部作の第1作。
セバスチャンは母親が家を飛び出したスキャンダルを回復し,イギリス1の美男子と目される弟,ジャスティンと互いに心を許し合える兄弟でありながら,自分はジャスティンと比較して容貌で劣っていると普段から思っていた。一方,父親が誰かもわからず,母親を幼いときになくしたデヴォンは,ロンドンの下層社会で気高い精神を失わずも,貧しさから逃れられず,ある夜勤め先からの帰路,ハリーとフレディという二人のゴロつきから大切な財布とネックレスを奪われそうになり,激しく抵抗した際,靴に隠し持っていたナイフでフレディを刺してしまう。自らも脇腹を刺され,意識を失って倒れているところを偶然通りかかったセバスチャンに発見され,侯爵のロンドンの屋敷に運ばれ,手当を受ける。意識を失っているデヴォンの美しさに一目惚れしたセバスチャン,目を覚ましたとき,ハンサムなセバスチャンの姿を見て熱い想いを感じたデヴォン。二人の運命の出会いはこのとき始まった。
身分が低いにもかかわらず,決して自分の主張を崩さないデヴォンの気高さに興味を感じたセバスチャンと,弟にかなわないと口にはするものの兄弟二人の面倒を自分一人で背負っているたくましいセバスチャンに恋心を抱くデヴォンのやりとりに,読者は思わずニヤリとさせられる。互いに想いを寄せ合う二人だが,身分の違いから結婚できないと考えざるを得ない時代の制約が正統的なヒストリカル・ロマンスの醍醐味を味わわせてくれる。
そして,終末で,デヴォンの身に驚くべき真実が・・・。
3部作第1作として,次作を期待させる渾身の一作。
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