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シンデレラに靴を [マリー・フェラレーラ]

SHALOCKMEMO435
シンデレラに靴を Angus's Lost Lady
Families Are Forever) 1998」
マリー・フェラレーラ 児玉ありさ





 マリー・フェラレーラのロマサス。いわゆる記憶喪失もの。原題の「Angus」はヒーローの名前ですが,私立探偵業を営むアンガス・マクドゥガルの元へずぶぬれになりながらやってきた美女が,いきなり「私をご存じ?」と尋ねるところから,物語の幕が開きます。この冒頭の意外性がとても面白いので,思わずずずっと読み継いでいき,気がつくと最後まで行っていた,というのがこの作品の魅力です。いわば,記憶喪失ジェットコースター・ストーリー。
ヒロインのレベッカ(ベッキー)は,電話帳でなんとなく気になったレベッカという名前が自分の名前であることを思い出す(名字の方は思い出せません)ほか,自分が料理が得意であることや,コンピューターを巧みに操れることなど,知らず知らずに自分の得意分野を体現していきますが,読者も次は何が思い出されるのだろうという興味が持続していき,これが記憶喪失ものの醍醐味なのでしょう。
 さて,ヒーローのアンガスには,亡くなった妻との間の一粒種,ビッキという7歳の娘があります。別れた妻が亡くなってから父親の元にやってきたビッキとの,まだぎこちない関係もさることながら,記憶が戻ったとき,結婚していたらとか,婚約していたことがわかったらなどという心配から,互いに惹かれながらも,なかなか相手に自分の本当の気持ちを言えないでいる二人の関係がもどかしく,じりじりする,という感情移入がしやすいのも,記憶喪失もののおもしろさでしょうが,作者のフェラレーラは実に巧みに,これを作品にちりばめていきます。最後がハッピーエンドになるのがわかっているロマンス小説だけに,いつ,どのように二人の関係が進展するのか,それを自然に読者に気づかれないように伏線を張っていくのも,作家としての腕の見せ所ではないでしょうか。そういう意味でも,7歳のビッキのキャラクターが一本副旋律のように流れを形作っていくのが,この作品のもう一つの魅力でもあります。最後に邦題名の「シンデレラの靴」が,あまりプロットの関係してこないことが一つ残念なことです。


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