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ためらいの誓いを公爵と [キャロライン・リンデン]

SHALOCKMEMO449
ためらいの誓いを公爵と What A Gentleman Wants 2006」
キャロライン・リンデン 白木 智子





「紳士が望むこと」とでも訳すのでしょうか。牧師の未亡人ハンナとエクセター公爵マーカス・リースのヒストリカル・ロマンスです。
エクセター公爵マーカスには双子の弟デヴィッドがいます。世の中にたった数分生まれた時間が違うだけで,兄と弟という絶対的な違いができてしまう二人。双子の宿命とでもいうのでしょうか。兄のマーカスは長男らしく,生真面目で面白みに欠ける男。公爵家の対面を守るため常に家族に気配りするような性格。一方弟のデヴィッドは人好きのする優れた容姿を利用して,次々に悪さをしでかし,面白おかしく生活している,いわゆるすね者。しかし,そんな弟のしでかした不始末を文句を言うぐらいで,常に後始末をして回る兄のマーカス。
ある時,馬車の競争をしているとき,穴のあいた道路で馬車がひっくり返り大けがをしたデヴィッドを助けたのは,牧師の未亡人ハンナでした。悪態をつきつつも,ハンナに助けられ,本来の優しさを取り戻し,自分のこれまでの悪行を反省し始めたデヴィッドは,ハンナに求婚し,経済的に困っていたハンナを救おうとします。しかし,そんなデヴィッドが思いついた最大のいたずらは,婚姻届に自分の名前ではなく,兄のマーカスの名前を書くことでした。そんなこととは全く気付かず,エクセター公爵家を訪れたハンナを待っていたのは,デヴィッドの出奔と兄マーカスの冷たい視線だったのです。財産狙いで自分との結婚を画策したと思い込んだマーカスの冷たい視線にもめげず,亡父との間の一人娘モリーと公爵邸を訪れたハンナは,すぐにでも帰郷しようと決意するのですが,ここでも体面を気にするマーカスに,社交界のほとぼりが冷めるまでの数カ月,夫婦のフリをするように求められ,経済的にも困窮していたことから,なんとなく公爵家にとどまることになってしまいます。マーカスの義母レディ・ロザリンドと義妹のシーリアはハンナをすっかりマーカスの花嫁と思い込み,なにくれとハンナとモリーの世話をします。ハンナはそんな二人の女性の期待を裏切ることもできず,誤解だとは言い出せなくなってしまいます。
さて,悪行を繰り返していたデヴィッドは偽札作りにもかかわっていたようです。そんなことが公になれば公爵家の対面はとても保てないと思い,マーカスはひそかに当局と取引して,捜査に協力する代わりにデヴィッドがかかわっていても表沙汰にはならないように画策します。はじめはぶっきらぼうで,自分を嫌っていると思っていたハンナですが,そんなマーカスが本当は家族想いのとても優しい男性であることに気づき,次第にマーカスに惹かれていきます。また,マーカスも愛らしいモリーや,自分の境遇にくじけずに自然を愛するハンナの美点に気付き,心憎からず思うようになります。しかし,契約結婚のように過ごそうとしていたことから,互いの思いを打ち明けられずに数カ月が過ぎていきます。後半では,デヴィッドがかかわっていた偽札づくりの黒幕が登場し,公爵家に一大危機が訪れますが,ハンナが機転を利かせて大活躍し,デヴィッドもマーカスも命を救われます。
経済的にも,身分の上でも弱い立場にあるハンナが,気丈に,しかも機転を利かせてマーカスや公爵家の面々に受け入れられ,終にはマーカスと相思相愛の本当の夫婦になっていくストーリーは,心温まり,すっきりした余韻をもたらしてくれます。


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