SSブログ

  禁じられた初恋 [シルヴィア・アンドルー]

SHALOCKMEMO454
禁じられた初恋 Elenor 1994」
シルヴィア・アンドルー Sylvia Andrew 古沢絵里





これまで読んだシルヴィア・アンドルーの作品には原題が人名のみの短いタイトルがいくつかありました。「セラフィーナ Serafina」,【「幸せな誤解」のフランセスカ Francesca】などですが,この作品の原題「Elenor」は「エレノア」だと思ってヒロインがいつ登場してくるのかと思っていたら,ついに途中で「エレノア」ではなく「エリナー」と訳されていたのですね。それに気づいて,あわてて初めから読み返しました。
父も兄も領地のことをほったらかしで,領館の図書室には古くからの良質の図書が満載の地主階級の娘エリナーは,父が存命中の若いころから領民の話をよく聞き,一手に差配をしていた乙女でしたが,領地が見知らぬ人に売られたという衝撃的な話を聞きます。しかも売ったのは母親のアンシアだと聞いて,なぜ自分に相談してくれなかったのかとショックを受けます。さらに売った相手は叔母がかねてから極悪人として嫌っていたジョナス・ガスリーだと知ってさらに打ちのめされます。
ジョナスには,ロンドンの叔母のところに滞在中,叔母やレディ・アンスリーから,レディ・アンスリーの家族を破滅に追い込んだ相手としてその悪行の一部始終を打ち明けられたのでした。しかし,ジョナス本人と話をしてみても,本当にそのような極悪なまねをするような人には思えなかったエリナーですが,自分の所領を勝手に改善し,それまでエリナーが大切にしてきた父の蔵書を売り払ったり,栗の木を切り倒したりし始めたのです。しかも,ジョナスには彼なりの言い分があったものの,それをエリナーに理解できるように説明しようとはしませんでした。二人の間には何度も衝突が起こります。ジョナスを信じようとする気持と裏切られ絶対会うまいと決意することが何度も繰り返されます。
しかし,噂から得られたジョナスの極悪ぶりも,領地に対する改善も,実はジョナスの気持ちから出た優しさと紳士的な気持ちからでした。一方で領地で起こるジョナスやエリナーに対する不可解な事故の原因が次第に明らかになっていきます。それは,ジョナスに対する悪い噂と大きく関係するものでした。やがて,ジョナスの方が正しく,噂を流している方が自分勝手な人々であることがエリナーにも理解されていきます。最後には領主館の図書室に火がつけられ,裏の秘密の部屋に逃げ込んだ二人が救出されると同時に,悪行の報いを受けた実業家が遺体で発見され,ハッピーエンドとなります。
表紙のブロンド,小顔,愛らしいヒロインのイメージと作中のエリナーのイメージが若干食い違いがありますが,読者にカタルシスをもたらす作者のストーリーテリングのうまさが,小気味よい佳作です。


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。