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戦士と魔術師の娘 [キャサリン・コールター]

SHALOCKMEMO457
戦士と魔術師の娘 Lord of Falcon Ridge 1995」
キャサリン・コールター 幾久木犀





これは,「戦士と誇り高き王女」の続編で,VIKING3部作の結末巻です。
ちなみに4部作らしいのですが,第1作は現時点では未訳です。
前作は比較的独立性が高かったのですが,本作は独立したストーリー部分と,シリーズ最終巻としての意味合いの両方があるので,第1巻から読んだ方が面白さも大きいようです。というのは,シリーズ第1巻から登場する人物とストーリーがところどころに顔を出し,その人間関係が今回の物語の伏線になっている部分が多いからのようです。
ヒーローは前作で,メリックによって,ラーレンやトビーとともに奴隷商人の下を助け出されたクリーヴです。最後の方でがけから落ちるという事故に会い,その犯人が虫も殺さぬような気弱でやさしい女性と思われ,クリーヴが思いを寄せたサーラだったという衝撃的な事件があり,サーラが産んだクリーヴとの一粒種キリがいいキャラクターで登場してきます。また,クリーヴが奴隷商人に売られる前の幼少のころは,ある領主の息子であったということが,夢の中で判明してきます。
ヒロインはアイルランド王の娘チェッサ。しかし,アイルランド王は本当は魔術師が取って代わっており,本当は王女ではないということが,そうそうに語られます。まさに邦題にある「魔術師の娘」とは,このチェッサのことでしょう。しかも,全体的にこのチェッサの突飛な言動やヨーク王とその息子と王妃の王侯としては信じられないような言動など,ややユーモア的な要素があちらこちらに散りばめられ,怒っている事件やストーリーはかなり深刻なものでありながら,物語全体としてはなにか人を,人生をちょっと揶揄しているような雰囲気も漂わせています。
後半は,魔法と神秘のスコットランドが舞台となり,ネッシーも登場してストーリーに重要な役割を果たすなど,ファンタジーの醍醐味を感じさせるお話になっています。ファンタジー好きな人にもたまらない部分でしょう。最後は人の愛や和が魔術に勝ち,一同の平和な食卓には笑い声が満ちているという暖かいエンディングになっています。物語の3分の1近くを魔術と神秘に費やしたのも,この終末への光と影を対比させるためではなかったでしょうか。コールターの圧倒的な筆力を感じさせます。
なお,原題の「Falcon Ridge」は,クリーヴやチェッサがネス湖の南に作る領土の近郊の高台「鷹の峰」を指しています。クリーヴはやがて,この象徴的な地形,「鷹の峰」の領主と呼ばれるようになるのでしょう。
物語の最後まで重要な登場人物はほとんど死ぬことなく何らかの形で生き残っています。これからいくらでも書き継ぐことのできるだけの登場人物が出てきていますので,きっと続編が続いていくものと思います。


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