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黒衣をまとった子爵 [カレン・ホーキンス]

SHALOCKMEMO458
黒衣をまとった子爵 Her Officer and Gentleman 2006」
カレン・ホーキンス 戸田早紀





カレン・ホーキンスの「リーヴスにおまかせ」シリーズの第2弾。前作の「海から来た伯爵」(未読)と本書は,貴族の双子の兄弟,トリスタンとクリスチャンが,父親と不可解な母の死により爵位を継ぎ,社交界でも生き残っていくために,理想的な執事リーヴスが影になり,兄弟二人がそれぞれにふさわしい奥方を娶るまでを差配していくというお話です。ですから本当の主人公はリーヴスという執事だというとても変わった設定になっています。物語の各章の冒頭に抜粋されているリチャード・ロバート・リーヴス著「正しい執事であるための完全なる手引き」が,本書の最後でリーヴスが本にしたいと述べているものの抜粋という形をとっていますが,執事という職業の特徴とともに,どのような職業であっても宮仕えする者にとっての必要な知恵や技術が詳述されていて,それはそれで面白いノウハウ本になるという,一読で二度おいしい作品ともいえるでしょう。
本書は,前作のヒーロー,トリスタンの弟のクリスチャンが,生きるために追いはぎに身をやつしながらも努力して財産を手にし,兎角の噂に負けずに上流階級で一目置かれ,監獄で亡くなった母の復讐を果たそうとしますが,復讐の相手だと考えていたマシンゲール公爵の孫娘エリザベスに出会った時,その美しさと純真さ,頭のよさに次第に惹かれていき,ついには恋に落ちるというラヴストーリーと,母を陥れた本当の敵は果たしてだれかというサスペンスとが縦軸になり,クリスチャンのビルドゥングスを助けるために,執事のリーヴスが知恵と技術の粋を集め,クリスチャンにふさわしい相手としてエリザベスとの結婚を決断させようとするというサイドストーリーを横軸にして物語を進行させ,見事な作品に仕上がっているお薦めの一冊です。


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