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熱き心は迷宮を照らし [MIRA文庫]

SHALOCKMEMO480
熱き心は迷宮を照らし Heart of Fire 2008」
キャット・マーティン Kat Martin katbooks.com 岡 聖子





気高き心は海を越えて」の続編です。前作では,バイキングの兄弟,リーフとソルがイギリスに渡り,パクストン家で幸せな生活を送るところまででしたが,リーフとクリスタは本書でも登場し,さらに,本書ヒロインのクリスタの親友コラリーを守ろうとするソルも多く登場してきます。次作のヒーローがソルであることを意識しての登場なのでしょう。
さて,セルカーク子爵令嬢コラリー・ホイットモアには母親の異なる姉ローレルがいましたが,二人はとても仲が良く,活動的で気の強いコラリーと比べて,優しく,気弱なローレルが,川に身を投げるいう悲劇的な亡くなり方をしたことを納得できないコラリー(コリー)は,その真相を知ろうと決意し,姉が最後にいたトレメイン伯爵グレイソン(グレイ)・フォーサイスの城に,今は行方知れずになっている伯爵の遠縁,サイラス・モス夫人レティになりすまし,姉の死の深奥を探ろうとします。初めはその身分に疑念を抱いたグレイでしたが,貧窮し,可憐に見えるコリー(レティ)に,次第に惹かれていき,愛人にしようと考えるようになります。もともと,りゅうとした男ぶりで社交界でも名うての美男子で通っていたグレイですが,レティはグレイの隠された優しさ,たとえば貧しい少年を助けたり,領地の農民の出産を助けたりする心の優しさに触れ,姉の死にグレイはかかわっていないことを確信し,グレイを愛するようになります。
グレイの弟チャールズや従兄弟のジェイソン,異母弟のデレクなど,ローレルとの関係を疑える人物が登場しますが,謎の解明は終盤,領地の郷士の息子が登場するにいたり,だいたい予想がついてしまいます。また,疑わしき女性陣も華やかに登場します。グレイの元愛人のディヴァイン伯爵夫人べサニーや義妹のレベッカなど,結局は欲が生んだ様々な人間模様とねじれた愛の関係は,貴族の家族ならばかくありなんというわけです。そんな中で次第に愛を深めていくコラリーとグレイの関係は,とてもさわやかで,社会の矛盾に立ち向かっていこうとする19世紀イギリスの社会の変化と合わせて,一大スペクタクルに仕上がっている見事な作品です。
かつて,インドでグレイに仕えていた軍人サミールがなかなかいい味を出しており,執事があまり活躍しない本書でのバイプレーヤーとなっています。




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