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さらわれた花婿 [カレン・ホーキンス]

SHALOCKMEMO489
さらわれた花婿 How to Abduction a Highland Lord 2007」
カレン・ホーキンス 伊勢由比子





「リーヴスにおまかせ」シリーズで2巻でているカレン・ホーキンスの新シリーズ「マクリーン一族の呪い」の訳書の第1巻です。
ホワイト・ウィッチ(善き魔女)の一族マクリーン家の娘フィオナが敵対するキンケイド家の放蕩者ジャック・キンケイドの泥酔のすきを狙って無理やり司祭の下に連れて行き,妊娠していると偽って結婚式を挙げてしまう場面から物語が始まります。怒りが天候を左右し,天・嵐・稲妻を呼び寄せてしまう呪われたマクリーン一族。末の弟のカラムが殺されてしまい,それに伴って両家が殺しあうのを防ぐために,というスコットランドの気の強さの風土が物語の背景にはあるようです。
このシリーズ(今のところ5巻目が予定されているようです)の原書では,青や赤の引きずるように裾の長いドレスをまとった女性が横や後ろを向いて歩いたり座ったりする様子が描かれ,訳書のように顔を見せてはいませんが,いずれも脚線美を惜しげもなく見せている点が共通しており,とびきりの美女であることを暗に示しています。いわくありげなこれらの表紙絵は,謎めいた能力をもつマクリーン家を象徴しているようです。
さて,本書の魅力は,なんといってもヒロインとヒーローが互いに相手のことを想っていくようになる,心の変化にあるのではないでしょうか。そして,敵役やヒロインを貶めようとする意外な人物が,終盤で,人間は物質や金では動かない,本当の愛を知らない思い上がった心情が,いかに相手を傷つけるかに最後まで気づかないその対比にあると思います。そして,表面的にはどうしようもないと思われている敵対する二つの家族が,ヒーローとヒロインの暖かく互いに思いやる姿を目にすることによって,共通の敵役をとっちめていくストーリーと,ユーモラスな言動にあるのではないでしょうか。
呪い,魔女など暗くなりがちなテーマをいかにもさわやかに描いていく,カレン・ホーキンスの筆力とストーリーテリングぶりに拍手です。


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