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夜明けの窓から口づけを [エリザベス・ソーントン]

SHALOCKMEMO492
夜明けの窓から口づけを Strangers at Dawn 1999」
エリザベス・ソーントン Elizabeth Thornton elizabeththornton.com 細田利江子





「宿の窓から飛び込んできたのは,魅惑的で危険な紳士」と惹起に書かれているように,本作は,ヒストリカルロマンスでありながら,サスペンス色の強い,いわばヒス・ロマ・サスとでもいうべき作品でした。原題も「夜明けの異邦人(直訳)」ですから,往年のハードボイルドの作風がしのばれるような魅力的な題になっています。その題に恥じないというべきか,ふさわしいというべきかわかりませんが,全編を通じて,ロマンス色,ヒストリカル色,サスペンス色,そしてミステリの醍醐味も感じさせてくれる,E・ソーントン渾身の作品に仕上がっていると思います。また,今月冒頭では2作つづけて訳者細田利江子さんの訳に当たりましたが,とくにあとがきでは,簡単な蘊蓄をさりげなく入れ,あとがきから読む人にとっても,魅力的な導入になっています。
ヒロインのサラ・カーステアズは,なんだか嫌味なお姉さんキャラ,ヒストリカルではよくいる家庭教師風なところがあり,あまり魅力は感じませんでしたが,中盤からヒーローのマックスとのロマンスのところでは,急に愛らしい,女性らしさと,奔放な女の姿が登場し,まさに表紙の写真にあるように,美しさと大人の感じと,そして凛とした鋭さみたいなものが入り混じった不思議なキャラクターでした。また,ヒーローのマックスウェル(マックス)・ワースは,周囲の人々には裕福な貴族の跡取りであることを気付かれないように極力称号を名乗らず,ジャーナリストとしての生き方に誇りを感じるさわやかな男性であり,真実のためには命も賭けるが,本当に愛する人のためには愛を優先するという,ちょっとカッコよさを前面に出した男性でした。
サラの妹や義弟たち,そして義母,幼馴染の弁護士など周囲の人々にかける思いは,ちょっと理解しがたい面もありますが,大団円ではほほえましさが漂ってくる素敵な関係だと思います。
マックスの両親はほとんど背景にいるだけで顔を見せません。この作品はシリーズ化されているわけではないようですが,ちょっと興味を引きそうな変わり種のようですから,どこかで登場させてほしい人たちです。
たくさんの登場人物がその性格がきちんと描き分けられており,作品の中で生き生きと動きまわる,なかなか素敵な1作でした。




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