SSブログ

公爵と百万ポンドの花嫁 [オーロラブックス]

SHALOCKMEMO498
公爵と百万ポンドの花嫁 To Marry the Duke 2003」
ジュリアン・マクリーン Julianne MacLean juliannemaclean.com 山田香里





カナダのヒストリカル作家ジュリアン・マクリーンの「アメリカの女相続人」シリーズの第1巻です。2003年から2007年までに4巻出版されているようです。
マクリーンという名字からしてイギリス(スコットランドかアイルランド)に出自があるのでしょうが,あるいは,旧姓でない可能性もありますので,ちょっとわかりませんね。自身のHPでは,最愛のご主人と愛らしいご令嬢,そして愛犬の写真が出てます。
原題が「公爵と結婚する法」ということからも,アメリカ人(の富豪)がイギリスの爵位や貴族階級にどれほど執着心を持っているかということがうかがわれますが,階層社会であるアメリカと階級社会であるイギリスとが私たち日本人からみると,そう大きな違いがないように見えるのですが,実は意識の上ではかなりの開きがあるのかもしれません。歴史の国イギリスと,アメリカ人のライフスタイルの違い,男女観の違いから,結婚観の違いに至るまで,事細かにヒーローとヒロインに語らせながら,作者マクリーンは明らかにしていきます。
「ミス・ウィルソン(ヒロイン)は,このロンドンへ称号を金で買うためにやってきたのだ。そして彼は非常に価値の高い称号(公爵)をもっていて,さらに彼女が用意している代価を必要としている。これは取引だ。それを彼女は了解している。彼も了解している。その点を忘れてはいけない。」ヒーローはこのように自分に言い聞かせてヒロインに惹かれる気持ちを自分で抑えようとします。
一方,ヒロインであるソフィアはアメリカ人らしくヒーローに惹かれる自分の気持ちを抑えようとはせず,「あなたは,愛が幻想だと思っているの?」「わたしはあなたのためにすべてを捨てたのよ,あなたを愛していたから」と心から訴えます。国民性の違いばかりでなく,幼い頃から愛されて育ったソフィアと,逆に小さい頃から父母に愛情をかけられず,逆に父親からは疎まれ,しかも祖父の代からの自分の家族に架せられた血のせいだとも考えていたウェントワース公爵ジェイムズとの,家族との関係からくる感じ方の差でもあるのです。
結婚後,ソフィアはジェイムズの領地であるヨークシャーで義母や義妹と過ごします。義母は前公爵夫人として,頑ななまでにマナーやしきたりを重んじ,アメリカ人であるソフィアに対してもつらく当たるのですが,義妹は身近なところに姉ができたことを喜びます。夫であるジェイムズは,ときにソフィアに惹かれるのを逃れるようにロンドンに行ったり,領地にいるときでも食事の時間をずらしたりと,ソフィアを避けるのですが,領地の農家の盲目の老女に聖書を読んで聞かせる姿や,館の使用人たちとよい関係を築いていくソフィアの姿を見ているうちに,次第に「癒し,慰め,愛」という,これまであえて目を背けようとしていたことが周囲の人々によい影響を与えてることに気づき,ついに本当の愛に目覚めるのです。忌まわしい過去のことがらにも自らの力で乗り越えようとするジェイムズに変身していったとき,ソフィアとジェイムズは本当の夫婦に,なっていくのでした。
そのために使われたお金が百万ポンドであっても,決して高くはないのよ,と作者はページの裏でほほえんでいるようです。


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。