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麗しのプリンセスとくちづけを [アン・グレイシー]

SHALOCKMEMO508
麗しのプリンセスとくちづけを The Stolen Princess 2008 (Devil Rider 1)」
アン・グレイシー 桐谷知未





イギリス生まれながら,大陸の小国ジンダリア公国の大公妃となったキャリーは一人息子ニコライを伴ってイギリスに逃げ帰ってきます。大公の死後,ニコライの命が狙われていることを確信したからでした。元の家庭教師ティビーを頼って入国しようとしましたが,密漁船はある海岸に密かに二人をおろして去ってしまいます。海岸から崖を登って道路にたどり着いたところに疾走してきた馬にあやうく蹴られそうになった親子を避けるため馬を跳躍させたのは退役軍人ゲイブでした。こんな冒険譚のような幕開けで始まる本作ですが,ヒロイン,キャリーとその息子の皇太子ニッキー,ヒーローのゲイブとその腹違いの弟ハリー,ゲイブに拾われる漁師の息子ジムなど,親や家族の愛情薄く育った人々が登場します。そこに,強力な仲間意識で互いに信頼を寄せ合うデヴィル・ライダー(悪魔の乗り手)と呼ばれる屈強な男たちの助けを受けながら,心を通わせ合い,信頼と成長を互いに見守り,凍った心を溶かしていくヒューマンなストーリーが展開されていきます。脇役を固めるバロウ夫妻,ゲイブとハリーを実質的に育てた大伯母や,社交界に絶大な力を持つ叔母など,不幸な少年時代を送ったにもかかわらず,暖かく,愛情深い心を持つ大人に成長させてくれた周囲の人々の姿がとても生き生きと描かれ,ストーリーにふくらみを持たせています。
反面,ジンダリア公国の伯爵アントンのように,自分の地位を固めるため甥の命を奪おうとする敵役が登場し,悪巧みをしますが,それから逃げずに立ち向かっていこうとするキャリーの心の成長も描かれ,読む者に勇気と生きる意欲を与えてくれます。
大団円でキャリーに向かって語られるゲイブのことば「君は僕の家であり,家族であり,目的であり,心なんだ」には,涙を禁じ得ない傑作です。


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