気高きレディの初恋 [ロレイン・ヒース]
SHALOCKMEMO513
「気高きレディの初恋 As An Earl Desires
( Lost Lords 1 ) 2005」
ロレイン・ヒース 文月なな
ロレイン・ヒースの「ロスト・ロード」シリーズの第1弾です。すでに邦訳では第2弾の「伯爵の情熱は海をこえて」を読了していましたので,前後しましたが,いずれにせよ,原作の方のシリーズ第2弾,"A Matter of Temptation"は未訳です。そして,本書で頻繁に出てくるハリントン公爵夫妻のロマンスは,未訳の作品で語られるようです。
「伯爵の・・・」でも記したように,ロレイン・ヒースはイギリス生まれのテキサス育ち。「伯爵の・・・」では,ヒーローはアメリカとイギリスの間を行ったり来たりしていました。本作では最後のほうに,「伯爵の・・・」のヒーローであるトマスが顔を出します。
さて,本書を一言で言うと,静かなロマンスという印象を受けます。ヒーローのアーチボルド(アーチ)は元教師で最近伯爵位を継いだばかり。そしてヒロインのカミラは,アーチの父の後妻でありながら,急に伯爵位を継いだアーチに社交界でのルール,伯爵としての心構えなどの指南役を務めますが,前夫との間に子供が生まれなかったことから,妊娠・出産ということは不可能だと思い込んでいます。アニメ「巨人の星」の主題歌ではありませんが,「おもいこんだらしれんのみちを」を地でいくような考え方と行動をとっていきます。カミラはまさに貴婦人を地で行くような女性であり,アーチが田舎への愛着を捨てきれなく悩むところも含めて,静かなロマンスというイメージが強く漂ってきます。
しかし,そんなカミラの行動の理由として,とても貴族婦人には考えられない二つの重大な秘密をもっていたのでした。物語後半でひとつずつ秘密が明らかになりますが,貴族階級ではとても考えられないカミラの秘密も,一般民衆の間ではごく当たり前であったこともあり得ると思われます。ちょうど,今月,CS放送でバーネットの「小公女(リトル・プリンセス)」を放映していました。これなどを見ると,階級社会であるイギリスのものの考え方,上流・中流・下層の人々の生活の様子が克明に描かれていました。この本質は現代でもあまり変わっていないのかもしれません。
「伯爵の・・・」では,イギリスとアメリカの文化の違いが克明に描かれていましたが,教養社会イギリスとサクセスストーリーの国アメリカの国民性の違いは,本書でも影を落としています。
コメント 0