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公爵代理の麗しき災難 [キャロライン・リンデン]

SHALOCKMEMO521
公爵代理の麗しき災難 What a Rogue Desire 2007」
キャロライン・リンデン 岡本三余





 「ためらいの誓いを公爵と」に続く,リース兄弟ものの2作目です。前作で問題児として兄の結婚に一役買ったリース家の弟デヴィッドですが,兄夫婦が大陸に新婚旅行に出かけるとあって,その期間の公爵としての仕事の代理を引き受けます。しかし,これまで放蕩者として,公爵の仕事など,何一つこなしたことのない自分が,何とか役に立ってみようと決意したことも確かです。そんなデヴィッドをいくつもの不幸が待っていたのですが・・・。
 公爵の身分を表す紋章付き指輪をして,兄の仕事場へと乗った乗合馬車が,追いはぎの一味に襲われ,指輪をとられてしまいます。そして,同乗していた美しい未亡人を守ろうとして殴られ,昏倒してしまいます。兄の仕事を完遂するためには代理であることを示す指輪がとても大切なものであると考えたデヴィッドは,すぐさま,ロンドン中の質屋をめぐり,指輪に懸賞金を掛けたのでした。そして,連絡のあった質屋で指輪を売ろうとしていた人物を待ち構えていると,そこに現れたのはなんと,乗合馬車の美しい未亡人ではありませんか。捕り手に突き出すか,追いはぎの一味を自分の手で突き止めるか。未亡人がその場には指輪を持っていなかったため,女性を自分の家に連れて行き,仲間のことを探ろうとします。
 それまでは,数人の悪い友達とロンドンで放蕩の限りを尽くしていたデヴィッドですが,幼い頃から自分をかばってきてくれた兄に恩返しをしようと本気になっていて,公爵としての仕事を兄の家の執事や事務員の助けを借りながら,何とか果たしていきます。しかし,家に連れてきた未亡人はなかなか自分のことや仲間のことを話そうとはしません。しかし,未亡人が図書室にある戯曲に興味を持っていることに気づいたデヴィッドは,美しいドレスを着せてミセス・グレイと名乗らせ未亡人を王立劇場での観劇に伴います。初めて劇場での観劇に興奮したミセス・グレイは,デヴィッドの本当の優しさに次第に心引かれ,自分の本名がヴィヴィアンであることや出自を語り,ついにはデヴィッドのキスを受け入れます。しかし,弟がいて,いやいやながら追いはぎの一団と一緒にいることは告げられないでいます。
 そのころ,街道でブラック・デュークという盗賊団の台頭が噂となり,一度はデヴィッドもその仲間ではないかという疑いを掛けられます。ブラック・デュークこそが自分の指輪を持っていると推測したデヴィッドは,街道の乗合馬車に乗り,捕り手よりも早く盗賊団を見つけ出そうとします。ミセス・グレイことヴィヴィアンも,下々の言葉を自由に話せるという特技をデヴィッドに納得させ,一緒に行動することになります。
 二人は盗賊の首領に出会うことができるのでしょうか。さらにヴィヴィアンの弟サイモンを救い出すことができるのでしょうか。絶体絶命の危機に陥ったとき,果たしてデヴィッドを救うのは誰なのでしょうか。
 物語は意外な展開を見せ,すべては収まるところに収まるのがロマンス小説の醍醐味ではあるのですが,本書では,たとえ,過去にどんなことがあっても,自らの努力や才覚で,人は自分の人生を切り開いていくことができるのだというビルドゥングス・ロマンの王道を十分に示す秀作となっています。


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