侯爵と仮面舞踏会の花嫁 [オーロラブックス]
SHALOCKMEMO522
「侯爵と仮面舞踏会の花嫁 An Affair Most Wicked 2004」
ジュリアン・マクリーン Julianne MacLean juliannemaclean.com 山田香里
ジュリアン・マクリーンのウィルソン家三姉妹をヒロインにした女相続人シリーズの第2弾。前作から2年後の1883年のアメリカとイギリスを結ぶシリーズです。
第1作「公爵と百万ポンドの花嫁」では,金に飽かせてイギリスの爵位を買いにくるアメリカの富裕な娘という存在が,イギリス上流社会で眉を顰められていながらも,その財産を必要とした当時のイギリス貴族の葛藤という面がクローズアップされていました。本作でも社会的状況は変わらないのですが,本作のヒーロー,ロードン侯爵シーガー・ウルフは別に金に困っていない富裕な貴族であり,ヒロイン,クララと結婚が決まった後も,クララの父に持参金を断ったりしています。
前作で公爵婦人となったソフィアの妹,クララは次女の特権とでもいうのでしょうか,少々冒険好き。付添役のミセス・ガンサーと二人で,たまたま迷い込んでしまった仮面舞踏会で出会った見目麗しい男性にすぐに惹かれてしまいます。その舞踏会は独身男性や不実な既婚者からのみ利用されることが多く,MWO(マリッジド・ウィメン・オンリー)と招待状に書かれているような場所でした。ヒーローもそんなところに出入りしており,まともな舞踏会にはここ数年足も踏み入れたことのない,変り種だったのです。シーガーはクララが間違って足を踏み入れたことに気づくや,すぐに退場するように付添役の元に彼女を連れて行きます。このときのこの行動が,後にシーガーがクララにプロポーズしたときに義兄の公爵からポイントを稼ぐことになったことの一つでした。
さて,一度きりの偶然の仮面をつけたもの同士の出会いでしたが,互いに相手のことが頭から離れません。通常男性側からでなければ,行動を起こせない当時の常識でしたが,アメリカ娘のクララにイギリスの常識は通用しません。再び仮面舞踏会を訪れ,再度シーガーに会いに出かけます。この大胆な行動力に新鮮な魅力を感じたシーガーは,次に夜中にクララの家の外に場所を止めてクララを誘い出すという行動に出ます。このように互いが互いの行動を止めることができなくなり,シーガーはクララに求婚します。
本作は,結婚してからの二人が,互いの愛情を確認し,真のカップルになっていくまでのあれこれを中心に,愛の妨げになる過去の出来事や,継母・従妹など身近な人々,そしてヒロインの気持ちを支えていく姉や妹など,多くの人々のかかわりを描きながら,真の愛に気づいて互いを許し,信頼していくようになる二人を描いた秀作です。
前作で娘を貴族に嫁がせようと奔走して強力な個性を発揮していたウィルソン夫人は,今回はあまり顔を出しませんが,逆にアメリカ娘にイギリス男性を取られまいとするヒーローの継母,クインティーナの活躍が光ります。次作は三女,アデル。いつイギリスにやってくるのでしょうか。
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