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夢に想うは愛しき君(ド・ウォーレン一族の系譜 2)  [ブレンダ・ジョイス]

SHALOCKMEMO523
夢に想うは愛しき君 The Stolen Bride (deWarenne Dynasty 8) 2006」
ブレンダ・ジョイス 立石ゆかり





 ブレンダ・ジョイスの最大シリーズ「ド・ウォーレン一族」シリーズの邦訳第2弾です。
 邦訳第1弾「仮面舞踏会はあさき夢」でも書きましたが,このシリーズはなぜか第1作から翻訳されず,第7作から翻訳され始めました。詳細はわかりませんが,想像するに,第1作からの数作と,第7作からの数作はおそらくヒーロー,ヒロインたちの世代が違うのかもしれません。これは,第1作目の「The Conqueror」が翻訳されてみないとわかりませんが,アイルランドを舞台としている本シリーズの第1作が「征服者」ですから,かなり歴史的に古い時代(11世紀後半)を背景にしているのではないかと思われます。
 さて,第7作目の前作では,時代は19世紀初頭,ド・ウォーレン家の長男ティレルとフィッツジェラルド3姉妹が中心のストーリー展開でした。古い名家にありがちで,第8作の本書では,ティレルの妹でウォーレン家の末娘,エレノア(エル)と,異母兄ショーンの激しい愛が描かれています。
 4年間家族にもまったく連絡を絶っていたショーンが突然現れたのは,エルの結婚式のわずか2日前でした。イングランドの上流階級の息子との結婚を前にエルは,幼い頃からあこがれの気持ちを抱いていたショーンの出現で,結婚を取りやめようと考えます。そして,式の直前,ショーンとともに出奔します。まさに映画卒業を思わせるこの直前逃亡で,物語は盛り上がりますが,この4年間ショーンが何をしていたのか,エルに対する気持ちはどうなのか,そして,4年間の中でも投獄されていた2年間以外にショーンがなんとしても言いたがらない2年間は何があったのか。周囲の兄弟たちを巻き込んで,次第にその秘密が明かされていきます。
 それにしても,エルの気持ちの変化と,ショーンがエルへの愛に気づいていくのに,なんと多くの時間と出来事が費やされるのでしょうか。読者はまさにイライラ状態が数百ページにもわたって続きます。そして,アイルランドとイングランドの確執,常識と激しい愛のせめぎあい,親子・兄弟の関係,宿敵との対決などが最後の十数ページであっけなく解決し,エピローグに至ってしまう点など,ちょっと納得の行かない思いをする読者も出てくるのではないかと思いますが,カタルシスの解消という点で,あえて筆者が狙ったストーリー展開だとすれば,まさしくその術中にはまることになると思います。
 これは,読む側にも忍耐と大人の完成を要求する作品なのかもしれません。


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