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口づけは暗闇の中で [キンバリー・ローガン]

SHALOCKMEMO526
口づけは暗闇の中で A Kiss in the Dark 2005」
キンバリー・ローガン 颯田あきら





キンバリー・ローガンの邦訳第1作。
19世紀初頭のロンドン。エリントン伯爵トリスタン・ナイトは,8年前に目前で母を殺されるという場面に遭遇する。父親には愛情を感じていなかったが,母には深い信頼と愛情を感じていた。その母を助けることができなかったという負い目もあり,父と喧嘩して家を飛び出し,放浪と放蕩の生活を送る。その父も亡くなり伯爵家を継いだトリスタンだが,年頃になった妹エミリーに対して,どのように接したらいいかわからない。そんな兄と口げんかして,エミリーは家出してしまう。ロンドンの貧民街に迷い込んだという情報を元に,トリスタンは貴族未亡人のロザビィ子爵夫人ディアドリを訪ねる。とかくの噂のあった美貌の未亡人に,トリスタンは心が惹かれるが,エミリーの探索に気持ちを集中するため,自分の心に弁解をしながら,ディアドリの手を借りて捜索に乗り出す。
一方エミリーは,貧民街で偶然殺人現場を目撃してしまい,犯人一味に追われるが,貧民街で暮らす路上生活少年たちの一団,ラグ・タグ団のリーダー,ピーターに助けられ,その隠れ家で自分の居場所を見つける。
ピーターとエミリーもやがて互いのやさしさと思いやりある態度を認め合い,惹かれあうが,互いの抱えている素性などの問題点がぶつかりあい,なかなか素直になれない。
さて,ディアドリの助言でエミリー捜索を進めるトリスタンだが,これまでにない存在として意識し,信頼できる女性だと思ったところで,重大な裏切り行為を受け,ついにディアドリの秘密を知ってしまう。
エミリーとトリスタンは出会うことができるのか。二人の母を殺した犯人は誰なのか。ディアドリとトリスタン,エミリーとピーターの二組の関係は・・・といろいろな関係が次第に絡み合い,やがて急展開を迎えるサスペンス色とロマンス色満載の傑作です。

本書の魅力はなんといっても,タグ・ラグ団の少年たちとエミリー,トリスタンの交流でしょう。路上生活をせざるを得ない社会のゆがみの犠牲になった子供たちを何とか愛情をこめて育てようとするディアドリやトリスタンの母のような存在が,ディケンズの小説のように時代の雰囲気をたっぷりと伝える役割を果たしています。また,ピーターたちの成長譚としても,そして過去の秘密を清算しようともがきながら勇気を持って立ち向かっていくディアドリの姿に,さわやかさと勇気をもらえる作品に仕上がっています。


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