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盗まれた花嫁 [シェリー・ブラッドリー]

SHALOCKMEMO528
盗まれた花嫁 His Stolen Bride 2000」
シェリー・ブラッドリー 芦原夕貴





「伯爵の花嫁」に続くシェリー・ブラッドリーの邦訳第2弾です。
 前作のヒーロー,アリク・ネヴィルの親友であるドレーク・マクドーガルが本作のヒーローです。ドレークは前作で,腹違いの兄に幽閉されており,アリクと親友キーランによって救出されたのですが,本作はさらにその1年後,腹違いの兄マードックへの復讐を誓うドレークは,マードックの婚約者エーヴリルを誘拐し,隠れ場所のスコットランドの孤島に連れ去ります。所謂略奪婚もの。
 エーヴリルの父が所有する領地は,荒れ果てており,富裕な領主であるマードックと結婚することによって,自分たちの領民が救われると思い込んでいます。さらに,やさしく声をかけてくれるマードックを理想の夫と考え,ドレークに連れ去られた時は,ドレークが自分の父を殺した殺人者であり,無法者であるというマードックの言葉を信じています。そのため,誘拐された時は,なんとかしてドレークのもとを逃げ出そうとしますが・・・
ドレークとエーヴリルが仮の結婚をし,宿泊している宿の上階からマードックが二人を捜索しに来たのを見たとき,エーヴリルはマードックの本性を見て,ドレークに対する思いを持ち始めている自分に気付きます。一方,マードックへの復讐のためエーヴリルを誘拐したドレークですが,一途なエーヴリルの気持ちに気付き,愕然とします。「泥沼の人生を歩んでいる自分に,神はなぜこれほど美しい花嫁を与えてくれるのだろう」という1行に,ドレークの気持ちが集約されています。
 エーヴリルとドレークは試験結婚(原語ではなんというのでしょう?)して,島で二人きりの生活をしますが,「愛」を信じられないドレークと自分を「不器量」と父に教え込まれたエーヴリルの気持ちはすれ違ったままです。ドレークの親友キーランが本土の情報を伝えに島を訪れますが,ドレークはキーランが妻の手をとって慰めただけでも烈火のごとく怒りの気持ちを表します。キーランはそのことから,ドレークがエーヴリルを本気で愛していることを指摘するのですが,ドレークの気持ちを変えることはできません。二人とも離れがたく愛によって結びついているのに,互いにそれを素直に認めることができないこと,しかも,それが各々の背負っている過去や責任に起因していること,その悲劇を思うと,読者も胸が締め付けられるような焦燥感にとらわれます。ふと振り返ると,物語中盤までで,すっかり作者の思うつぼに嵌ってしまっていることに気付かされます。

 終盤,アリク,キーランらの助けを借りて,自らの危険を承知でマードックの元に向かったエーヴリルを助け出そうとするドレークですが,ここで,二度三度と危機に陥ったドレークを救うためにエーヴリルがとった突飛な言動は,まさに意外です。著者のサービス精神と,あくまで周囲も納得する結末が準備され,最後まで読者を飽きさせない仕掛けに満ちた作品です。


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