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花嫁選びの舞踏会 [オリヴィア・パーカー]

SHALOCKMEMO531
花嫁選びの舞踏会 At the Bride Hunt Ball 2008」
オリヴィア・パーカー Olivia Parker 加藤洋子





オリヴィア・パーカーは新進ヒストリカル作家で,本書がデビュー作となります。他の作品としては,「To Wed a Wicked Earl(2009)」があり,「Guarding a Notorious Lady」が2010年に出版に予定です。読後感の第一印象としては,かなり力のある作家さんだという気がしました。登場人物一人一人がしっかり描かれ,ストーリーの中の役割も明確で,しかも設定やストーリーに無理やり感がなく,大団円のまとめ方もとても伝統的で,温かな余韻をもたらすエピローグが付いています。本書の訳がベテラン加藤洋子さんというところも原因しているのかもしれません。
 さて,物語ですが,公爵の花嫁選びの舞踏会(原題になっているブライド・ハント・ボール)に集められた7人の麗しき美女たち。なにやらドラマにありそうな設定ですが,ヒロインのマデリン・ヘイウッドは男爵家の令嬢ではありますが,所謂良家の令嬢にはふさわしくない,ドジで財産もなく,常識はずれなミスをよく起こすかわいらしい女の子。そのマデリンが舞踏会への招待状をもらうところから始まります。自分には公爵家の花嫁になるつもりなどは全くないヒロインなので,なんとか招待状を執事から受け取るのを避けようとしますが,公爵本人の作戦にまんまと乗ってしまい,結局親友のシャーロットを守るという理由を自分に言い聞かせて招待状を受け取ることになってしまいます。
 ヒーローはもちろんのこと公爵であるガブリエル・デヴィーンですが,実はこの花嫁選びの舞踏会は公爵の弟トリスタンのための舞踏会でした。デヴィーン家の兄弟は,背が高く,誰もがうらやむほどの美貌を備えた理想的な風貌と,ありあまる財産をもつ,社交界では花婿候補の筆頭に挙げられる兄弟ですが,兄のガブリエルは人を愛することができない,心に傷を負い,妹のロザリンドも,なにかいわくのありげな様子。結局次男のトリスタンに公爵家の跡継ぎを託していたのでした。そんなトリスタンに乙女らしいあこがれの気持ちを抱いている親友シャーロットを,愛のない結婚から救うために,マデリンはこの舞踏会への出席を決めたのでした。
 舞踏会といっても,一夜限りの舞踏会ではなく,お見合い期間として二週間,公爵家の屋敷で過ごし,最後の晩の夜中12時に,花嫁がトリスタンからバラの花を渡されるという劇のようなイベントです。この間に,ガブリエルとマデリンの気持ちの交流がしっかりと描かれます。さらに,トリスタンとシャーロットの関係がどうなるのかも描かれ,所謂二重の花嫁選びの物語がスタートします。

 訳者あとがきに書かれているように,この設定は,「読者の心をがっちり掴むツボ」を得ていますし,映像として見るように,描写が生き生きしています。不器用で,お転婆で,とびきりキュートという三拍子そろったコミカルなヒロイン,マデリンと,その親友で,ちびまる子の親友たまちゃんのようなシャーロットの活躍するハートウォーミングな本書は,手に取った方すべてに楽しんでいただけ,ヒストリカルロマンスの魅力を十分に楽しめる作品に仕上がっていると思います。


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