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公爵と乙女の秘密 [デボラ・シモンズ]

SHALOCKMEMO557
公爵と乙女の秘密 Heart's Masquearade 1989」
デボラ・シモンズ Deborah Simmons deborahsimmons.com 岡 聖子




HQB-296/10.05/\940/542p


デボラ・シモンズのデビュー作。この作品の後,「不機嫌な花嫁 Fortune Hunter 1992」「シャーロットの冒険 The Vicar's Daughter 1995」など元気で愛らしい乙女たちが続々と登場する,デボラ・シモンズの世界を読者である私たちに示してくれることになります。
さて,ヒロインのキャサリン・アンバーリーは,父を亡くし,母にも死なれ,遺産をいとこのエドワードに継がれてしまい,さらに命を狙われることになります。お転婆で,上品な社交界の生活よりも,自然や乗馬など男の子のような好みを持って生活してきたキャサリンは髪を切り,キャットととして少年の姿になり,私拿捕船に紛れ込み,キャビンボーイとして船長ランサム・デュ・プレイや船の仲間の中で暮らし始めます。18世紀の帆船での生活を,海洋小説で読んできた者としては,いかにお転婆な乙女とはいえ,マストを昇ったり,帆を修理したりということが,なまなかなことではできないことは容易に想像がつきますので,ちょっとこの設定は無理があるかなとも思いますが,親切な航海士のボースンや巨人で心優しい船員などがかなりキャットを気に入って,かばってくれたおかげで,この船の旅も不可能ではなかったようです。ボースンとは通常,掌帆長を指すのですが,小型の船では航海士も兼ねるのでしょうから,名前というよりは役名といったところでしょう。この船の中では本名などを知る必要もないのかもしれません。
船長ランサムには宿敵のデブリンという闇のボスがいて,手先を使って汚いやり方でランサムの財産を少しずつ無くそうという動きをしていました。キャットは叔母のもとを訪ね,やっとキャサリンとして,平安な日々を過ごしますが,そこに,貴族の公爵としてランサムが登場します。キャサリンがキャットであることは気付かれないものの,ランサムに憧れていたキャサリンのみならず,どこか見覚えのある感じから,ランサムもキャサリンに惹かれていきます。秘密を抱えたままの二人の関係は,時に近寄り,時に遠ざかります。その駆け引きの面白さをデボラ・シモンズは十分に読者に示してくれます。デビュー作にしてこの技法。まさに,デボラのストーリーテラーとしての面目躍如。しかも,ヒーローにもヒロインにも過分な感情移入をせず,どちにらがわからも,バランスのとれた書きっぷりであり,二人の駆け引きが決して嫌味にならずに物語が進行するうちに,敵役が登場し,キャサリン=キャットの冒険行と,息もつかせぬ展開も待っています。
また,脇役として登場するバルバドス島のアメリア叔母やランサムの親友でフランス人の放蕩者ルネなど魅力的な人物も顔を出し,シリーズものにしてもいいようなすばらしいキャラクターに恵まれた作品でもあります。
惜しむらくは,敵役となるデブリンやその手下のリチャード,そして悪役になりきれない伽遠のいとこのエドワードなどがちょっとかすんでしまっているところでしょうか。そのため,終末がちょっと尻切れの感じが否めませんでした。




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