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禁じられた「恋の指南書」 [エマ・ワイルズ]

SHALOCKMEMO582
禁じられた「恋の指南書」 Lessons from a Scarlet Lady 2010」
エマ・ワイルズ  Emma Wilds 大須賀典子





 リージェンシー時代,良家の子女たちは,まだまだ弱いものとされ,20歳前に社交界にデビューし家柄に会った男性と結婚することが常識と考えられていました。巷ではそんな上流階級とは異なった生活が繰り広げられていたわけです。本書の陰のヒロインとなっているのは,レディ・ロスバーグとして知られていた高級娼婦の書き記した「恋の指南書」で,あまりの正直な内容のため,禁書になってしまいます。しかし,書店で偶然その本を手に入れたロルスヴェン公爵夫人ブライアナ・ノースフィールドは,愛する夫が杓子定規で融通がきかず,自分に素直に愛の表現をするのをためらっているのを,なんとか変えようと思い,「恋の指南書」を参考にした,夫改造作戦を実行する,というストーリーです。
 そして,さらに,公爵コルトン・ノースフィールドの末の弟で放蕩者の名をほしいままにしているロバートに思いを寄せるブライアナの親友で未婚の令嬢レベッカ・マーストンも,公爵夫人から指南書を借り,ロバートの思いを自分に向けさせるために,さまざまなことを試みるという,二重のロマンスが描かれています。
 公爵を籠絡するブライアナの手腕は,ちょっと行きすぎかなと思わせるものもありますが,愛する夫になんとか力を抜いて自分とともに歩んでほしいと願う健気な女心が表れていますが,レベッカとロバートのロマンスの方が,メイン・ストーリーかと思わせるほどていねいに二人の関係の高まりが描かれ,純愛プラス音楽を通した二人の心の交流に好感が持てます。さらには,ふた組の関係をなんとか成功させようと,陰になり日向になり活躍するノースフィールド家の次男ダミアンの活躍も見逃せません。この冷静で策略家のダミアンがロマンスに陥る物語もぜひ読みたいものですが,今のところ書かれてはいないようです。
 とても充実した,そしてストーリーはあっさりしていながらも,ふたつのロマンスを1冊で味わうことのできるお得な1書です。




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