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情熱のさざめき [アレクサンドラ・ベネディクト]

SHALOCKMEMO583
情熱のさざめき Too Great a Temptation 2006」
アレクサンドラ・ベネディクト 桐谷知未





 運命のすれ違いにより互いに憎みあわなければならなくなった恋する二人という悲恋物語を,弟の敵を討つため放蕩貴族から海賊探求の船乗りへと転身するヒーローと,男兄弟を見返すため海賊船に乗り込む絶世の美女のヒロインとが織りなす壮大な海洋冒険小説。
 ウェンベリー公爵ダミアン・ウェストモアは,自分を放蕩から救うために新婚旅行から急いで帰郷しようとした弟夫婦が,旅の途中で海賊船に襲われて海の藻屑と消えたという知らせを聞き,その復讐を果たすため船を仕立てて船長として海賊ブラックホークを探す旅に出ます。途中,ニューヨークでけんかに巻き込まれ投獄されますが,ひょんなことから助けた少年とともに,少年の兄弟の所有する商船「麗しのメグ号」に航海士として乗り組みます。そして,そこで少年の姉であるミラベルと運命的な出会いをするのです。仇討のため海賊を探すという自分の目的をひた隠すダミアン。そして乗り込んだ船が実は海賊船であるということをひた隠しにするミラベルの兄弟たち。互いに惹かれるものを感じながらも互いに秘密を持つ二人は,反発しあいながらも次第に船の中で互いを意識しあうようになります。
 ロンドンに戻ったミラベルは,友人のヘンリエッタ・アシュビーの家でパーティに参加しますが,このときの二人の会話はスピンオフ作品「意地悪なキス」で再びヘンリエッタの側から登場します。そして,そこでミラベルはダミアンに似た謎の男に声を掛けられますが,この謎の男が終末で重要な役割を果たします。
 ともあれ,互いの気持ちに気付いた二人は,秘密を持ち続けたまま情熱の渦に巻き込まれてしまいますが,このあたりのロマンスの描き方,運命的な出会いとその進展の描き方は,秀逸のものがあります。そして,秘密を持ち続けたままの二人が互いの心の奥底にある,他人には告げられない秘密を少しずつ明らかにしていき,ついには・・・。
 しかし物語はここで終わりではなく,これまで伏線的に語られてきたいくつかのプロットと謎が少しずつ明かされていくところは,ミステリー的,冒険小説的要素たっぷりで,まさに作者の腕の見せ所です。
 さまざまな要素が溶け合い,しかもロマンス風味もたっぷりな本書は,まさにお薦めの1冊です。


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