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天翔る白鳥のように [ヒストリカル]

SHALOCKMEMO585
天翔ける白鳥のように Swan's Grace 2000」
リンダ・フランシス・リー 颯田あきら





 ホーソーン三兄弟の第2作ですが,第1作「家路を探す鳩のように」は未読です。本作では,前作のヒーロー・ヒロインも登場しないようですので,独立した作品として読んでもあまり問題ないようです。
 実は,帯の「ノーラ・ロバーツ絶賛」と「チェロ演奏家」に惹かれて本作を手にしました。おそらく,リンダ・フランシス・リーの本作を手にする人のほとんどがそうでしょう。ピアニスト,ヴァイオリニスト,チェリストなどの演奏家や作曲家などがヒーロー,ヒロインとなる作品は,結構多く見受けられますが,いずれも,心に深い傷を負った設定になっています。それが,ヒーロー・ヒロインの条件でもあると言えばそれまでですが,演奏や音楽の内容にそのことが深く関与しているのは当然のことだと思われます。そんな楽曲や演奏が実際にどんな響きをもたらすのか,実際に聴いてみたいという気がとてもします。
 さて,本作のヒーロー,グレイソン・ホーソーンは三兄弟の長兄。経済的に困窮するホーソーン家を立て直すために,全精力を使って弁護士として活躍する青年です。職業柄,自分をさらけ出すことなく,すべてをきちっとしてなければならないと思い込んでいます。ヒロインのソフィ・ウェントワースは,少女時代から天才チェリストとして名声があり,地元ボストンの演奏会場でデビュー演奏できるとプロデューサーに言われていたのに,演奏させられず,失意のあまり,ヨーロッパにわたり,奇抜な服装や演奏姿勢で人気を博したものの,三人の取り巻きも含めた生活費を稼ぐために毎日思い悩んでいるとき,父親からボストンに帰郷するように手紙をもらい,数年ぶりに帰郷したところです。ソフィもまた,実母を失い継母からも父親からも見捨てられたと思い込んでおり,愛を失った気持ちをもっています。
 帰郷したソフィを待っていたのは,実母から遺産として受け取った「スワン・グレイス」の家が自分の知らないうちにすでにグレイソンによって買い取られ,しかも自分とグレイソンの婚約までも決まっていたことでした。父親が金で本来娘のものである財産と,その結婚相手すら買うために家を売り払っていたことを知り,ソフィに残されたのは故郷でチェリストとして認められるかということだけ。バッハの無伴奏パルティータを弾くべきか,ヨーロッパで身に付けた奇抜な演奏法を見せるべきかさんざん悩みます。
 一方グレイソンは,ホーソーン家とウェントワース家というボストンでも由緒ある家同士の婚姻が必要だということを頭では理解しているものの,常に自分に逆らい,奇抜な行動ばかりするソフィがはたして自分の妻としてふさわしいかということに悩み,さらに父親から受ける冷たい視線の原因が自分の出生の秘密と関係あることを知ったとき,自分の中に全く思いがけない感情が生まれ,ソフィにも同じ悩みがあることに気付きます。この出生の秘密が「ホーソーン」という家名の意味なのか(いわゆる「緋文字」のこと)と,ここで,はたと思い当たりました。
 20数年を経たそれぞれの家の秘密をはらんで,ソフィとグレイソンのロマンスの行方がとても生き生きと描かれた傑作,まさに「NR」が認めるのも,うなづけます。


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