愛されぬ花嫁でも [ニコラ・コーニック]
SHALOCKMEMO591
「愛されぬ花嫁でも Kidnapped:His Innocent Mistress 2009」
ニコラ・コーニック Nicola Cornick nicolacornick.co.uk 石川園枝
2007年以来のニコラ・コーニックの読了本です。ハーレクイン・ヒストリカルは284ページが標準でしたから,本書の252ページは,それよりやや短めの作品です。表紙のジュリア・ロバーツ似のモデルぐらい,本書のヒロインが美人だったようなイメージはありませんので,ヒーローにはこのように見えていただろうということで,まぁ,いいでしょう。
舞台はスコットランド。ヒロインのカトリオーナ・バルフォーはバルフォー一族の娘で父は校長をしていましたが,父母を相次いで亡くし,明日からの生活をどうしていいかと考えていたところに,遠い親戚にあたる海軍将校ニール・シンクレアから愛人にならないかという失礼な声掛けをされます。独立心が強く,頑固で,所謂なよなよしていないカトリオーナの性格が本書では繰り返して述べられていますが,いとこのエレナに比べるまでもなく,当時の上流階級の女性としては,跳びぬけて変わり種であったと思われます。拒絶したカトリオーナですが,結局父の弟であるエベニーザーの管理するグレン・クレアで世話になることにしますが,実はこの領地の正当な持ち主はカトリオーナ自身であるはずですが,カトリオーナの父が領地を管理する気がなかったため,長い間エベニーザー叔父が管理人,というより領地の所有者のようにふるまっていたのです。当然,叔父一家には余計者として扱われたカトリオーナですが,いとこのエレナだけは,カトリオーナと年齢が近いこともあり,絶対の信頼と友情を寄せるのでした。
さて,エベニーザー叔父はカトリオーナに領地の正当性を主張されると厄介であることから,ある日暴漢に襲わせ,海軍の軍人であるニールともども,船に乗せてイギリスを追放しようとします。女性としての商品価値のあるカトリオーナは客として扱われますが,軍事であるニールは外海に出たところで海に沈められることになりました。スコットランドの海霧立ち込める中,座礁を逃れた二人は,無人島に漂着し,誰にも発見されないまま数か月を過ごすことになりますが,ニールはカトリオーナを次第に愛するようになるものの,紳士としての接し方を崩そうとはしません。カトリオーナは自分がエレナほど美しくもなく,持参金もないただの女性であることからニールから愛されるはずがないと思い込んでいます。
やっと捜索の船が来たのは,自分の父の悪だくみから勇気をふるって逃れ,当局に連絡したエレナの勇気ある行動のおかげでした。たった二人きりで数か月を過ごし,上流階級の評判を損ねないためにカトリオーナとの結婚を宣言したニールですが,ニールの両親や親せきの女性でニールとの結婚を望んでいたミス・メルヴェンらの姦計に嵌り,またしてもカトリオーナは窮地に陥ります。しかし,カトリオーナの気性を知りつくし,愛することを恐れなくなったニールは,カトリオーナの窮地を自ら救うのでした。
章回小説のように各章の冒頭にコメントのついたスタイルは,ちょっと古風で,ヒストリカルらしさを味わえる佳作です。
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