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広野に奏でる旋律 [ジュリー・ガーウッド]

SHALOCKMEMO603
広野に奏でる旋律 Shadow Music 2007」
ジュリー・ガーウッド  Julie Garwood  juliegarwood.com 鈴木美朋





 ジュリー・ガーウッドはコンテンポラリーもヒストリカルもどちらもこなす作家ですが,ヒストリカルの方に,とくに中世を舞台にした時は,すばらしい手腕を発揮する作家のように思います。
 スコットランドが群雄割拠のクラン時代はまさに日本の戦国時代のように多くの戦士たちが活躍する面白さがあり,それに翻弄されるヒロインたちも,決して上品で気弱なだけでなく,たくましく男たちに比しても負けない気の強さとたくましさを兼ね備えているように思います。
 本書もそんな中世ヒストリカルの面白さと,ヒーローとヒロインの間で交わされる,コンテンポラリー作品のようなポンポンとピンポン玉が飛び交うような会話の面白さの両方が楽しめる作品に仕上がっています。そんな意味で素晴らしい作品になっていることは間違いありません。
 さて,時代はジョン王時代。ヒロインはゲイブリエル・ブキャナン。ヒーローはコルム・マクヒュー。スコットランドのある氏族長のもとに嫁ぐことになっていたヒロインは,自分の遺産である領地に立ち寄ったところ,生き埋めにされそうになっている若者を救うことになります。しかし,瀕死の状態にある若者を修道院で治療してもらおうとしたところに,その兄であるヒーローがやってきます。見るからにたくましく恐ろしげなヒーローのコルムですが,ゲイブリエルにはちっとも恐ろしく思えません。そして,そのたくましさ,ぶっきらぼうさに次第に惹かれていくのです。そんなとき,嫁ぎ先の氏族長が殺されるという知らせが届きます。結婚式もなくなってしまい,自分のことであらぬうわさを立てられ,行き場を失ってしまったところで,ヒーローに一緒に来いといわれて,領地であるハイランドに向かうヒロイン一行でした。
コルムの領地の人々はみなゲイブリエルに親切に接し,様々な問題を次々にクリヤしていくのですが,やがて敵役のバロンにより,究極の困難に陥います。ところどころに登場するジョン王ですが,嫌われ者ではあるものの,ちょっとかわいい一面ものぞかせているところが,本作を暗い雰囲気にさせない一翼を担っているように思います。敵役のバロンたちのなんともトンマで憎めない性格にも,殺伐としがちな物語を終始面白くさせる要因になっており,正に作者の人物造形の深さが垣間見れる傑作だと言えます。




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