夢の騎士にふたたび [ヒストリカル]
SHALOCKMEMO610
「夢の騎士にふたたび A Dance Through Time 1996」
リン・カーランド Lynn Kurland lynnkurland.com 旦 紀子
約600ページの大部です。4日ほどで読了しましたので1日当たり150ページのスピードで読んだことになります。大部ではありますが,好きなタイムトラベルもの,さらにはスコットランドとアメリカ・ニューヨーク,14世紀と20世紀末という時と場の対比が面白く,すんなりと読めたと思います。まさにゴールデンウィークにふさわしいエンタテインメントでした。
歴史好きの小説家エリザベスは,ある夜,「ここへおいで」という男の声を聞きます。夢の中で現れる巨大で黒髪と緑の瞳をもつ男,それが中世1311年からエリザベスを呼ぶジェイミーことジェイムズ・マクラウドの声でした。心に森のイメージを想い浮かべているうちに,エリザベスは中世スコットランドのジェイミーの城の近くの森にすでに到達しているのでした。この森が人の願いを聞き時間旅行をさせてくれる場所だったのです。
あとは,頑固でプライドが高く,初めはエリザベスを魔女と思いこみ地下牢に閉じ込めてしまうジェイミーが,次第にエリザベスに惹かれていく様子や,中世の生活に苦労しながらもジェイミーを心底信じ切っていくエリザベスの心の動きが丹念に描かれていきます。二人の互いをののしりながらも次第に惹かれあっていく部分に,さわやかさと読者を思わずニンマリさせてしまう作者の筆力が光ります。
後半は,現代にやってきたジェイミーが,文明にどのように慣れていくか,またエリザベスの家族たちがジェイミーの,マクラウド家の頑固さとどのように折り合いをつけていくかが描かれます。そして最大の敵役,ノランが登場し,後は終末まで一気に冒険譚が始まります。
機械文明の便利さに慣れ切った私たちが,機械を持たざる中世にタイムトラベルしたら・・・。それに近い生活を,大震災で数週間味わった直後だけに,率直に感情移入できる作品でした。
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