私だけのプリンス [マリオン・レノックス]
SHALOCKMEMO651
「わたしだけのプリンス Claimed : Secret Royal Son 2009」
マリオン・レノックス 佐藤利恵
日本の皇室でも皇位継承をめぐって女性宮家の創設を含めた皇室典範の改正問題が論議され始めているようですが,どの王室でも皇位継承問題は最大の問題のようです。本書に登場する島国,おそらく地中海のいくつかの島でできている連合王国のようなものだと想定されますが,歴史上それぞれの島ごとに王室があったものをまとめて一人の皇帝が支配するようになった時期,民衆は独裁的な皇帝を嫌っていたのでしょう。その王様が亡くなり,求心力が落ちたところを継いでいる本書のヒーロー,アレックス(アレクサンドロス・コンスタンティノス・ミコノス)も家臣たちが忠実であればある程皇位継承問題に触れてくるのを避けるわけにはいかなくなっていたようです。然るべく血統のいいお姫様と政略結婚して跡継ぎを設けなければならない立場。もしも偶然に二人の間に本物の愛情が芽ばえればそれで良しとしなければならない,という立場はなんともさびしいものがあります。
それに対して,若かりし頃,皇太子時代のヒーローには将来のそんな姿が想像できればそれだけ,皇位継承とは無縁の気心の知れた相手との恋愛には心動かされるに違いありません。本書ヒロインのリリー・マクラクランとの間にはそんな互いの心の交流があったのも当然と言えるでしょう。しかも,二人の間には男の子さえいたのですから。しかしながら,リリーは独立した女性。自分とアレックスの間の息子ミカレスが皇位継承問題にさらされ,リリーの姉の実子として扱われ,両親から引き離されてしまったからには,何としても息子との生活を最優先させようとするのです。しかもリリーは才能ある船大工として打ち捨てられたボートを再生する仕事に熱中しながら,ミカレスを育てようとするのです。アレックスはそんなリリーの姿に再度惹かれていきます。
このシリーズ「地中海の王冠」は,小国のそれぞれの島の王室をめぐる物語。次作「プリンセスの帰還」では,アルギロスのニコスがヒーローです。
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