あの夜に戻れたら [トリッシュ・モーリ]
SHALOCKMEMO659
「あの夜に戻れたら The Ruthless Greek's Virgin Princess 2009」
トリッシュ・モーリ 加藤由紀
トリッシュ・モーリのハーレクイン・ロマンス。2010年10月の刊行です。「伝説の国のプリンセス」の関連作で,未読ですが,本書のヒーローの友人でヒロインの兄ラファエル・ロンバルディとシエナのロマンスのようです。本書ではすでに二人は結婚し,シエナのお腹の中には双子がその存在を主張しています。
さて,ヒーローのヤニス・マーキデスは一度傾きかけたマーキデス家を再興するために仕事フリークとなり,金融アドバイザーとして成功し,大金持ちとなっていますが,これには13年前のある出来事が関係しているのでした。婚約者のエレーナとの結婚を目前に泥酔して眠っているとき,ある女性がヤニスのベッドに侵入し自分の身を捧げようとしたのです。途中で目覚めたヤニスは忍んできた女性を部屋から追い出したのですが,女性が部屋をあわてて出ていく様子を他の人に見られ,エレーナとの婚約は破談になってしまいます。海運業を営むヤニスの父はより大きな資金を獲得するために富豪のエレーナの父との契約にこぎつけるため,息子の結婚を強引に進めようとしていたのでした。いわばこの婚約は政略的なものでした。しかし,うわさが広まったため破談になり,ヤニスの父の事業は失敗してしまい,失意の末ヤニスの父は亡くなってしまいます。ヤニスの部屋に忍んできた女性こそ,本書のヒロイン,マリエッタ・ロンバルディでした。ヤニスに惹かれていたマリエッタはヤニスとエレーナの婚約を知らず,16歳でヤニスの心をとらえるために自分を捧げようと部屋に忍んだのでした。そして,13年後・・・。ヤニスの兄の結婚式に再会したヤニスとマリエッタは,その後互いに決まった相手もなく,気まずい思いでいます。しかし互いに惹かれあう気持ちは13年の時を経ても変わっていませんでした。そして結婚式の直後,ロンバルディ家に脅迫状が寄せられます。宝石デザイナーとして自立しようとしていたマリエッタはハワイに自分の作品の直営店を開店しようとしていましたが,脅迫状にはマリエッタも指名されており,兄のラファエルは友人のヤニスにマリエッタを守るように依頼してしまいます。ヤニスも一緒にハワイに渡りマリエッタの店の開店準備に片時も離れずマリエッタを守ろうとするのですが,一度手厳しく拒絶されたマリエッタはヤニスの行動にいちいち反抗するのでした。開店準備がなかなかうまくいかなくなってとき,マリエッタがふと漏らした言葉に,ヤニスは自分に手助けできることを発見し,ついに開店パーティが開催されるのです。
13年前にヤニスがマリエッタを部屋から追い出した理由が徐々に明らかにされるというサスペンス色もにじませ,二人のロマンスが次第に高まっていく快作です。
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