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王子様とワルツを [ニコル・バーナム]

SHALOCKMEMO697
王子様とワルツを Going to the Castle 2001」
ニコル・バーナム 山田 沙羅





ニコル・バーナムのサンリミニ王国のシリーズです。皇太子のアンソニーは独身。国王からも国民からも早く身を固めるように期待されていて,特に最近,父である国王の体調がすぐれないこともあって,少なくとも1年以内に皇太子の王子が誕生することが喫緊の課題になっています。たくさんの貴族出身の娘たちが候補に挙がり,その親からも熱い視線を注がれています。しかし,皇太子のアンソニーは,いまいち王妃となる女性をこの人と決めることができないでいます。父である国王も国民のためにいわゆる政略的に王妃と結婚したのであり,自分の意思とは関係なく,国の安定のためいわゆる基準に達している女性との結婚が王族としての務めであることは,皇太子アンソニーにもわかっているのですが・・・。
時に,サンリミニ王国の隣国ラソボで内戦がおこり,多くの難民たちが苦しい生活を送っていました。サンリミニは架空の国ですが,もしかして,サンリミニはリヒテンシュタイン,ラソボはコソボ,というあたりをモデルにしているのかもしれません。その難民キャンプでは,アメリカ人女性,ジェニファー・アレンが所長として難民の世話にあたっていました。救援物資を持って皇太子がヘリコプターで難民キャンプを訪れたとき,ジェニファーとの運命的な出会いをします。そして難民の子供ジョーゼフと皇太子の交流が,エピローグで大きな意味を持ってきます。シンデレラストーリーを期待していないジェニファーは,皇太子の思いやりに心を惹かれますが,同時にボランティアは貴族の務めという皇太子の言葉も「やはり」と思え,心から皇太子を信頼することはできずにいます。大学生への奨学金取得の条件としてボランティアを義務付けるという皇太子の発案に多くの寄付を募るため,ジェニファーは王宮で開かれる舞踏会に出席し,スピーチを述べることになりますが,そこで皇太子との結婚をささやかれている上流階級の女性たちからの陰険な仕打ちをうけ,さらには皇太子と二人でいるところを写真にとられ,タブロイド紙に大きく悪意を持って取り上げられてしまったことから,難民キャンプへのボランティアの参加にも大きく影響されると思い沈み込んでいるところに,内乱が激化し,難民キャンプも攻撃を受けてしまいます。一方,国王から早急に婚約を命じられた皇太子ですが,「常に選択肢はある」というジェニファーの言葉を思い出し,密かに救援物資を持って単身ラソボを訪れます。時まさに,キャンプでは,がれきの中からジェニファーがジョーゼフを救いだし,自分は力尽きてがれきの中で気を失っていたところでした。そこにアンソニーが駆けつけ,ジェニファーを助け出すという劇的な出来事が起こります。しかし,翌朝,救援物資とともにヘリコプターを降り立ったのは,貴族の令嬢とのお見合いを急かしに来た国王その人でした・・・。さて二人のロマンスは・・・。ストーリーだけでも十分に楽しめる本作ですが,金銭の寄付をするだけで福祉的な活動をしたと考えている上流階級の人々と,自分の体を動かしてのボランティアが本当は求められているという現実とのギャップをうまく物語に取り入れ,ロマンスを描いていくバーナムの手腕がいかんなく発揮された作品です。


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