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王女様に乾杯! [ニコル・バーナム]

SHALOCKMEMO700
王女様に乾杯 The Knight's Kiss 2003」
ニコル・バーナム 高田映実

記念すべきSHALOCKMEMO700となりました。2003年9月に第1号のSHALOCKMEMOを書いてから700冊。ほぼ10年で700冊ですから,平均してみると年間70冊のペースとなります。ロマンス小説の読書量としては決して多いわけではありませんが,ホームページを立ち上げる前に,ノーラ・ロバーツやリンダ・ハワード,サンドラ・ブラウンなどは結構読んでいたので,このジャンルの読書量としては,自分の中ではここ10年余りで最も多い数量になります。
本作の分類はちょっとむずかしいですね。ヒーローが十字軍の騎士であり,呪いによって死ぬことができないまま1190年から現代に至るまで生きていて,サンリミニの王女イザベラと恋に落ちる設定ですので,タイムトラベル・ロマンスと言えないこともないのですが,ヒーローのニックのからしてみると,特に時代を飛び回って過去と現在を行ったり来たりしているわけではないので,「タイムトラベル」とは言えない面があるためです。
ニコル・バーナムのサンリミニ国のシリーズは,これで邦訳はすべて読み終わりました。王国の兄弟姉妹のロマンスの中で,本作のみが王女イザベラを主人公としていますので,他の作品とはちょっと異なった面があります。一つはブランド品の記述が多いこと。ロレックスの腕時計,バレンチノのドレスとビーズのバッグ,アルマーニやベルサーチのドレス,モンテグラッパの万年筆,マノロブラニクの靴などです。具体に名前が出ることでその華やかさが想像できます。王女の名前もフルネームで登場します。イザベラ・ビオレッタ・マリア・ディタローラ,このイタリア風な名前と「サンリミニは美しい国です。イタリアとバルカン諸国の間にあって世界有数の美しいビーチが楽しめますわ(34p)」という記述によって,前作のMEMOでも書きましたが,架空の国サンリミニのモデルがどこなのかが大体の想像ができます。
一方,ヒーローのドメニコ・ボラツィオ(愛称ニック)は12世紀に生まれ,魔女の呪いによって800年以上も命を長らえている十字軍戦士。しかし現時点での表面上の年齢は28歳となっています。ニックがそんなに長生きしていることを知らない王女が,王宮の収蔵品が歴史的な価値があり,それを評価できる機会は100年に一度の機会であることを述べたときに,思わず苦笑してしまうニック。永遠に死ぬことのできない彼にしてみれば,1000年に一度の機会と言われても思わず苦笑せざるを得ない場面です。そこに作家のユーモアとこの物語のもの悲しさが溢れてきます。ひたすら自分の務めを果たすために毎日忙しい生活を送っているイザベラの29歳の誕生日を祝うディナーのために,ニックとイザベラが王宮の秘密の通路を通って街なかに出かける場面は,あたかも「ローマの休日」をほうふつとさせる印象的で楽しい場面です。そして,自分を呪いにかけたルフィナが魔女裁判で有罪となり火あぶりに処せられた記録を発見した時のニックの絶望感。楽しい場面の直後だけにその落差に読者もすっかり作者の罠にかかってしまいます。こんなストーリーテリングのうまさがバーナムの魅力の一つではないでしょうか。
果たしてニックにかけられた呪いはとけるのか。とけるとすればどんな形でとけるのか。これも作者の用意した本作のもう一つの楽しみです。


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