届かぬ愛に傷ついて [サラ・モーガン]
SHALOCKMEMO709
「届かぬ愛に傷ついて (ウルフたちの肖像 1) The Tortured Rake 2011」
サラ・モーガン 山科みずき
メディカルものを得意とするイギリスの作家,サラ・モーガンの作品。イギリスのウルフ一族は,何人かの女性により8人の兄弟姉妹がいた。シリーズ「ウルフたちの肖像」はこの兄弟姉妹を廻るシリーズ。本作のヒーローは世界的に有名な俳優のナサニエル。ナサニエルと兄のセバスチャンだけが同じ母親の子供であり,他の兄弟姉妹たちはみな違う母親を持つという複雑な家庭。ヒロインは舞台の衣装デザイナー,ケイティ・フィールド。サラ・モーガンの作品としては珍しく看護師も医者も主人公ではない。ナサニエルは幼少のころの父母から受けたショッキングな事件から立ち直れないでいる。カリスマ性を持つナサニエル。そして,才能を持ちながらもデザイナーとしての自信を持てずにいるケイティ。ナサニエルは舞台「リチャード二世」のステージに立ったとたん,兄の姿を見かけ,パニックに陥り,舞台から走り去ってしまう。その時,楽屋で仕事をしていたケイティに助けられ,姿をくらます。ケイティはカリスマ俳優ナサニエルの顔をもちろん知っており,密かにあこがれの対象でもあった。そのナサニエルに救いを求められれば,もちろん手助けをするが,無名の自分にナサニエルとの関係を考えることなど思いもよらない。しかし,ナサニエルはケイティのデザインした衣装に彼女のもつ素晴らしい才能をみぬいていた。
やがて,マスコミを避けるためにブラジルに逃避行をする二人だが,互いのもつ心の傷に気づき,互いを思いやるうちに愛を育んでいく。やがて,故郷のウルフ邸でナサニエルは兄弟たちを集めようとする長男と出会い,その考えに同調するようになる。過去を乗り越えることができるか。シリーズの幕開けにふさわしい1作。
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