婚礼の夜の過ち [アビー・グリーン]
SHALOCKMEMO711
「婚礼の夜の過ち The Restless Billionaire 2011」
アビー・グリーン 藤村華奈美
シリーズ3作目は,アビー・グリーンの作品。ヒロインのアニーサ・アダニはインドの映画女優。これ以上ないほどの美貌,スタイル,純真さ,全てを兼ね備えた女性で,冒頭ではまさにインド式の結婚式の最中。しかし婚約者の俳優ジャマル・カプーア・カーンはなんと同性愛者。その秘密に結婚式が始まってから気づいたアニーサだが,全財産を賭けた豪勢な結婚式をやめることは,家族を不幸に陥れることになってしまう。悩み,躊躇していた瞬間,自分を見つめる視線に気づく。相手は,ハンサムで自分を見つめる目には,情熱が込められているような気がする。思い切って,式場を抜け出したアニーサを結婚式場のあるホテルの最上階のスイートルームに連れて行ったのは,セバスチャン・ウルフ。第1作のヒーロー,ナサニエルの実の兄だった。セバスチャンはホテルチェーンの経営者であり,インドのムンバイにあるこのホテルのオーナーでもあった。互いに惹かれるままに一夜を共にするセバスチャンとアニーサ。やがて,アニーサは自分の中にセバスチャンとの愛の結晶が育ち始めたことを知る。イギリスに帰ったセバスチャンが父親であることは間違いない。自分との交際を認めるかどうかは別として,自分のお腹の中にセバスチャンの子供がいることを知る権利はあるはずだと考えたアニーサは思い切ってセバスチャンを訪ねる。
複雑な家庭に育ち,自分が親になることの決断がつかないセバスチャン。弟ナサニエルの結婚式にも出席する勇気がわかないセバスチャンの心を解きほぐし,ウルフ邸に連れて行くことに成功するアニーサを,セバスチャンは自分と弟の区別もつかない自分の母親を訪ねるのに連れていく。少しずつではあるが,過去の重荷をほぐし,自分の心を開放していくセバスチャン。アニーサが寝言同然に「愛している」とつぶやいたのを聞き逃さずに,自分の感情に正直になろうとする勇気をもらったセバスチャン。アニーサとその家族によって,愛すること,愛するものを守ることを徐々に知っていくセバスチャン。全編を通じてセバスチャンの心の成長が静かに語られる秀逸な一作です。
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