SSブログ

すれ違いの地中海 [ジャネット・ケニー]

SHALOCKMEMO717
すれ違いの地中海 (ウルフたちの肖像 6) Illegitimate Tycoon 2011」
ジャネット・ケニー 藤村華奈美





シリーズ「ウルフたちの肖像」の第6作。ロマンス小説のストーリーとして愛が成就するというゴールに至るまでを描く作品が多いわけだが,本作は,既婚の男女が互いに愛する気持ちを失うことなく夫婦としての絆,家(建物や敷地),家庭,子供,仕事など夫婦として避けることのできない問題を真摯に描いた好著と言える。

ウルフ家のラファエル・ダ・ソウザは父親によって認知されずに母の姓を名乗っているIT企業の経営者。妻のライラ・サンティアゴは世界的なスーパーモデル。二人ともそれぞれに世界的な名声と実力を兼ね備えている,外から見れば理想のカップル。しかし,ライラはかつてモデル業にありがちな拒食症を病んでおり,授かった子供を失ってしまうという体験を持つ。一方,ラファエルは父から認知されなかったことから,子供をどのように愛し,育てていけばよいのかわからないという不安を強く持っている。互いの仕事の性質上,すれ違いが多く,年に一度くらいしか一緒に暮らせないという状況の中にある。ライラはモデル業と併せて,拒食症の少女たちの無料クリニックを運営するために,モデルの仕事をやめられないと考えている。夫が裕福であるにもかかわらず,その支援でクリニックを運営することは頑なに拒んでいる。そんなライラを常に追い求めているにもかかわらず,ラファエルもまた,自らの会社の運営をなかなか部下たちに任せられずワーカーホリックになっている。そんな二人が久しぶりに合流し,一週間を過ごすことになるのだが・・・。『すれ違いの地中海』というタイトルはここからとられている。一度流産した経験をやっと告げることができたライラ。その心の傷と不安を気遣うラファエル。その後,再びライラの妊娠が判明し,今度は双子だと分かる。ライラの仕事を極端に制限しようとするラファエル。家に縛り付けられるのをいやがるライラ。リオデジャネイロの家に落ちついた二人だが,妊娠中に,ライラにモデルの仕事の話が舞い込む。飛行機での移動は胎児に大きなリスクとなることを気遣うラファエルは,仕事を断るようにライラに迫るのだが,ライラは二人の家での撮影を承諾してしまう。おりしもラファエルはロンドンへの1週間の出張を余儀なくされ,帰宅した時にはまさに家の居間で撮影がお子縄手いる現場に遭遇する。ついに二人の間のわだかまりは最悪の展開へと・・・。

結婚はゴールではなく,まさに始まりであることを巧みなストーリー展開で描いた好著。


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。