王位をかけた恋(ロイヤル・オブ・ラブ) [ルーシー・ゴードン]
SHALOCKMEMO753
「王位をかけた恋 Princess Dottie 2002」
ルーシー・ゴードン 中野 恵
ロンドンの裏町の名前ばかりが立派なホテル「グランドホテル」でウエイトレスをしているドティは,恋人マイクとの結婚を間近にしていた。そんなある夜,場末のホテルにはふさわしくない立派な紳士がやってくる。彼こそエルリア国(ヨーロッパのドイツ語圏の資源の豊かな架空の国)の王位継承者,プリンス・ランドルフだった。しかし,ランドルフの王位継承権に疑義が生じ,このままでいくと欲深い隣国の大公ハロルドに王位が移ってしまいかねない。王室の必死な調査によりドティことドロテア・ヘブデンが直系の王位継承権を持つ人として浮かび上がってきた。ランドルフはドロテアが王位継承者としてふさわしいか,本人であるかを確認するためにロンドンにやってきたのだった。ランドルフは初めは理由を告げずにドティを観察しつつ声を掛ける。しかし,その時すでにランドルフの心の中にドティは忍び込むことになってしまうのだった。何度か会ううちにドティの性格の明るさ,必要な時には他人を従わせることのできる毅然とした態度をとることができるなどの美点を確認し,ランドルフはドティとマイクがエルリア観光局のキャンペーンの一環と偽って二人をエルリアの王室専用機に乗せてしまう。ジェット機の中でランドルフはドティに真実を告げ,迷っているドティを,どんどん女王としてエルリアに降り立たざるをえない状況に追い詰めていく。ドティもある程度の役割を果たせばイギリスに帰れるという気持ちになり,ランドルフの要求を承諾するのだが,その気持ちの背景にはランドルフとちょっとだけキスを交わしたことが忘れられないということがあった。
ドティに婚約者のマイクがいたように,ランドルフにも婚約者の女伯爵ゾフィー・ベッケンドルフがいた。小柄なドティに対してゾフィーは長身で美人,王妃になるべく氏育てられた生粋の貴族だった。ドティが王位を継承することに納得できないゾフィーは,エルリアの宿敵ハロルド大公と企てをし,正当な王位継承権がないことを証明しようとする。ランドルフが国王になれないことに強い申し訳なさを感じていたドティは戴冠式当日まで気持ちが晴れなかった。そして,戴冠式の場でハロルドとゾフィーが企てた驚くべき逆転劇。さらに逆転劇が用意され,めでたしめでたしとなるのだが,この最後の盛り上がりがすごい。
普通の人と普通の結婚をして普通の幸せを得ようと思っていたドティが,ジェットコースターに乗せられたように,次々に王室での出来事に出会い,戸惑いながらも持ち前の明るさと賢明さを発揮してエルリアの国民に愛され,さらにランドルフの愛をも手に入れていくビルドゥングスロマン。
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