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億万長者の願い事 [レイチェル・ベイリー]

SHALOCKMEMO779
億万長者の願い事 Countering His Claim 2013」
レイチェル・ベイリー 菊田千代子





 豪華客船「コーラ・メイ号」のオーナーが船中で亡くなった。この船を引き継ぐのは誰か?オーナーの甥ルーク・マーロウが船に乗り込んでくる。ところが弁護士は遺産相続の説明で,船の所有権の半分はルークだが,残る半分は船の船医であるアデル(デラ)・ウォルシュであると告げる。元オーナーの主治医で最期を看取った彼女は,ひょっとしてオーナーと男女の仲では亡かったのか。そんな疑問をもったルークは,そのことを正面からデラにぶつけていく。思わずほおを張ったデラ。そしてルークはデラに所有権を譲ってもらえれば,船を停泊ホテルに改造し,航行をやめる計画であることを告げる。
船で育ち,ここ2年間は元オーナーのパトリック・マーロウの治療を担当してきたデラにしてみれば,船が我が家であり,それはデラばかりでなく,船とともに過ごしてきた上級乗務員たちにとっても同じ思いであったことを説明し,ルークの計画を思いとどまらせようとします。そのため,船内を案内し3週間にわたって船で航行すること,その後に自分の決意を述べることを提案するのでした。ルークもまた,この条件で過ごす内にデラの気持ちを何とか変えてビジネスとして船の運命を決めていこうとするのでした。船内で過ごす内に,ルークは次第にデラに惹かれていることを隠さないでデラを誘惑しようとします。しかし,デラには亡き夫が人を助けようとして殺された時一緒にいて,自分の体にも人に明かせない見にくい傷があることをひた隠しにしています。見られたくない気持ちをルークには明かすデラ。デラもまた夫の死後初めて男性としてルークを意識し始めていたのでした。そんな時,船の厨房で火災が発生します。幸い寄港中で乗客もほとんど上陸しており,厨房だけで消火ができたため,航行を続けることができる程度でしたが,船医としてデラの仕事をルークも手伝うのでした。さらに,船の修復による損害費用の捻出という問題にはデラは何の力も発揮できないのに,ルークは自ら世界中に23個所ものホテルチェーンを持っている億万長者。財政的な問題では,ルークの独壇場でした。その事に気づいた時,デラは所有権をルークに渡し,船を下りる決意をします。かつて妻に裏切られ,もう女性を愛することができないと思っていたルークは,デラの下船によって,彼女に対する気持ちを新たにするのです。二人の関係の結末は?船の運命は?
 終始静かな動きの中で物語が進行し,デラを中心とした船のスタッフたちの暖かさ,そして船を愛する人たちの思いがじんわりと伝わってきます。デラとルークの関係もディザイアには珍しく互いの人権を尊重し,大切にする気持ちが言葉の端端から伝わってくる心温まる作品です。読後,楽園にいるような気持ちにさせられる秀作です。


タグ:ディザイア
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