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情熱の烙印 [ナリーニ・シン]

SHALOCKMEMO784
情熱の烙印 Bound by Marriage 2007」
ナリーニ・シン 雨宮幸子





原題の「Bound by Marriage」の“Bound”には,「境界線」の意味の他に「バウンドする」,「・・・の途上にある」,「縛られた」,「・・・するはず」,「・・・せざるを得ない」など様々な意味があります。直訳で「結婚による限界」という意味の他に,ジェス,ゲイブの夫婦にはこれらの意味が様々に入り交じった作品になっています。あえてタイトルに“Bound”を選んだ作者の深い思いがあったのではないかと思われます。両親の死によって残された牧場を手放さなければならなくなったジェスは,契約結婚によって愛する牧場,生まれ育った牧場を残すことができるという牧場主ゲイブの提案を受け入れ,1年間のロサンジェルスでの絵の勉強後牧場に戻り,ゲイブと式を挙げます。ジェスには幼なじみのデイモンがいましたが,デイモンには妊娠した妻ケイラがおり,留学中一度電話があったもののその後連絡がなかったことで,帰国後すぐにゲイブとの結婚に踏み切ったのでした。気持ちがデイモンに傾いてはいたものの,妊娠中のケイラをデイモンがすてて自分との結婚を望んでいることはとても考えられないからでした。ケイラの元に戻るように話すジェスの言葉をなかなか聞き入れず,デイモンは時々ジェスを困らせる行動に出るのでした。そのデイモンの子供っぽい判断力をかつてはジェスも認めて,それだからこそ,デイモンから離れられずにいたのでしたが,カリスマ性にあふれたゲイブが自分とデイモンの関係を疑っていることにも気づいていました。
ジェスの描いた絵が有名が画廊主デューセビクに認められ,個展を開かないかという申し出があり,ジェスは驚きます。デイモンの肖像がを描いたものの完成には至らず,ゲイブの肖像画を描いてしまうジェスでした。ゲイブとの間に子供ができたことに気づいたジェスは,「愛している」という言葉を言わないゲイブが果たして妊娠を喜んでくれるか心配で言い出せないでいます。そんな時,ケイラが流産の危機に襲われ,大きな病院に移送する必要が出てきました。幸い母子ともに無事に出産したのでしたが,お見舞いに訪れた時,ケイラにめざとく妊娠を見抜かれたジェス。その事はデイモンにも伝わり,病室を訪れたゲイブにデイモンから「おめでとう」と言われたゲイブ。冷静に表情を変えなかったゲイブですが,そんなゲイブを見てジェスの気持ちは穏やかではありません。「子供をほしがった自分は間違っていた」「子供は全寮制の学校に入れる」というゲイブの言葉に,驚きと絶望を感じたジェスは家を出て,画廊の元で個展の準備をすることにします。個展の開催記念パーティにゲイブは現れませんでした。画廊主がジェスを来客に紹介しようとしたところにゲイブが現れます。ジェスが家を出てしまったあと,元恋人のシルビーがゲイブの元を訪れたのですが,ゲイブは一顧だにしなかったのです。すでにジェスを心の底から愛していることに気づいていたのでした。
幼い頃に家族を火災で失ったゲイブがその後「愛」から心を閉ざさざるを得なかった背景を元に,自分の都合のいい女性との結婚を望み,ジェスとの結婚を決めたのち,次第にジェスの美しさ,相性の良さ,尊敬に値する画家としての才能に気づき,本当の結婚に至る過程を描いた作品ですが,まさに「愛し合う途上にある」「過去の亡霊に縛られた」ゲイブの心の旅路を描いた作品とも言えます。そして夫より9歳年下の妻ジェスがゲイブの心に寄り添い「自分を愛するようになるはず」「愛さざるを得なく」なるようにしようと決意するにいたるヒロインの心の成長譚でもあります。読者はまたしても魔術師ナリーニ・シンの仕掛けにすっかり・・・。


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