愛を買った億万長者 [サラ・クレイヴン]
SHALOCKMEMO838
「愛を買った億万長者 In the Millionaire's Possession 2005」
サラ・クレイヴン 茅野久枝
Mills and Boonの表紙の美しさに惹かれたことと,「先祖代々の屋敷を維持すること。それがヘレンの願いだ。だが、どこからも資金援助をしてもらえず、ヘレンは頭を悩ませていた。ある日、マルク・ドラローシュが屋敷を訪ねてきた。危険な魅力に満ちた彼はパリの建設会社の社長で、歴史的建造物の保存に関心があるという。」という内容解説の文に惹かれて本書を読み始めました。イノセントなヘレン。あまりに古風で自分の美しさに気づかないでいるヘレンの設定が,M&Bの表紙の女性とのギャップというか,いや,清純さをそのまま表しているように思います。白いドレスというところもとてもいいですね。ハーレクインの表紙に比べて,M&Bの表紙はどれも素敵ですが,電子書籍の価格がHQに比べてちょっと高いこともあって,どうしてもHQを紹介してしまいます。これはこれで仕方ないことですね。さて,本作ですが,モンティーグルという歴史的価値を持つ館の維持はイギリスではどこでも大変なのでしょう。特に女性一人が維持して行くには先代からの遺産がかなりなければ不可能で,個人が実際にそこに住みながら維持していくことは大変なことなのでしょう。そんなイギリス人気質が本作では全面に押し出されていて,その事だけでもロマンスとは無関係に面白く感じてしまいます。そして建築業者マルクがフランス出身であることと対比されていてちょっと紋切り型になってはいるものの,読者にはわかりやすい設定にもなっています。一人の女性との交際が二ヶ月も持たないと噂されているマルクと,古風な交際意識を持つヘレン。チャールズ二世を惑わせたとされているヘレンの先祖と同じ名前を持つヘレンが,互いの元恋人の存在をちらつかせながら誤解を続けていくことでストーリーに幅を持たせ,最後の最後まで興味を持続させていく作者の手腕に一気読みさせられてしまう快作です。パソコン版KINDLEでの初めての読書でした。
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