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最後の夜と知りながら [モーリーン・チャイルド]

SHALOCKMEMO998
最後の夜と知りながら Wedding at King's Convenience
キング家の花嫁 6) 2009」
モーリーン・チャイルド 江本 萌





シリーズ第6弾。南カリフォルニアのキング家のジェファーソンのロマンスです。第2シーズンのこのシリーズ,3兄弟だと思っていましたが,ジェリコ・キングという人物もいるので,4兄弟ということになります。この兄弟は全て“J”で始まる名前を持っていますが,ジェリコとジェファーソンのどちらが兄かはまだわかりませんが,出版の順からするとこのシリーズは兄弟の下から登場してきますので,ジェリコが長男かもしれません。
さて,今回は舞台をアイルランドに移します。映画制作会社を経営するジェファーソンは自ら世界を飛び回り映画撮影にふさわしい場所を確認することにしています。アイルランドのメイヨー州の羊牧場がその映画にぴったりの場所であることを発見しますが,オーナーのモーラ・ドノヒューに撮影許可を得ようとしていますが,なかなか首を縦に振りません。何日間もの交渉の末,次第にモーラの心も許しの方向に向き始めたと思いますが・・・。アイルランド人と言えば,頑固と言われるぐらい,石頭であることはよく言われることです。そして家族や隣人を非常に大切にする仲間意識が強いことも。そして乱暴な言葉遣いでもその裏にユーモアのセンスと強い仲間意識が根付いていることも。羊牧場の近隣のクラック村とモーラの関係においてもそのことがはっきり分かります。勝ち気で頭の回転が速く,発言は辛口,魅力的な体つきと柔らかに波打つ背中までの黒髪,そして頑固そうな顎と紺青色の目。それがモーラを見たときのジェファーソンの印象でした。ついに契約金を引き上げられるだけ引き上げたと思ったモーラはジェファーソンとの契約書にサインします。そしてサインが済んだ記念に祝杯を挙げた直後,モーラは厚手のセータを脱ぎ,ジェファーソンを誘惑するかのように近づいて行くのでした。サインさえ済めばジェファーソンはアメリカに、ロサンゼルスに戻って行ってしまう,今夜は最後の夜だから・・・。互いに惹かれ合う気持ちに気づいていながらこれまで一定の距離を保ってきましたが,互いの目の中の欲望を押さえるのに苦労していた二人は一瞬のうちに燃え上がっていきます。数日後ジェファーソンはアイルランドを去りますが,モーラは彼への想いを忘れることが出来ませんでした。そして1ヶ月後自らの身体の異変に気づきます。そして父親になるジェファーソンに連絡を取ろうとしますがなかなか連絡が取れないため,無視されているのだとモーラもあきらめの気持ちになるのでした。一方ジェファーソンは仕事に振り回されて忙しくしていましたが,それは自ら忙しく立ち回ることでモーラへの気持ちを忘れようと努めていたからでした。そんなジェファーソンの元にアイルランドで撮影を続けている監督から緊急の電話が入ります。村の人たちやモーラから撮影を邪魔する行為を受けているという訴えでした。オーストラリアへの出張を直前にしてジェファーソンはアイラルランドを経由していくよう予定を変更します。そしてクラック村でジェファーソンはかつて友好的だった村人たちから手ひどい拒絶を受け,その原因がモーラであると言われるのでした。モーラの家についたとたん,以前はいなかった飼い犬から飛びつかれ,挙げ句の果てにモーラから浴びせられたのも強い拒絶の言葉でした。そして真実が告げられます。「私妊娠したのよ」この言葉がジェファーソンを打ちのめします。モーラの側から,この数ヶ月のことが語られます。モーラを診察した診療所の看護師から妊娠の話が村全体に伝わったこと,そして連絡を何度取ってもジェファーソンが連絡を返そうとしなかったことで,モーラも村人たちもジェファーソンがモーラを妊娠させたあげくに捨てたのだ思っていたことが原因でした。ジェファーソンの秘書が気を利かせてジェファーソンにモーラからの連絡をストップさせていたことが原因でした。これまでも映画に出たいために多くの人が無理難題をふっかけてくるケースがあり,秘書の務めとして悪い話はジェファーソンに伝えないようにしていたのでした。
ここからジェファーソンによるモーラに対する猛烈なアタックが始まります。責任を重んじるキング家の男らしく,結婚を申し出るジェファーソンですが,モーラも連絡を取ろうとしなかったジェファーソンへの怒りと,子供のために便宜的な結婚を申し出るジェファーソンの態度へのプライドをかけたバトルが始まります。ジェファーソンが女性を愛することを止めた理由は終盤まで語られませんが,本当の結婚への怖れと愛することを口に出来ない理由が最初の結婚にあったことをやっとの事で語ることが出来たジェファーソンに対しても,未来を考えることが出来ないジェファーソンに自分と子供の将来を託すことが出来ないと別れを告げるモーラ。このモーラの毅然とした態度とせつない気持ちが読者の心を打ちます。そして立ち去ったジェファーソンに,敢然と挑戦しようとジャスティスに連絡を取り,ある計画を相談するモーラ。この最後まであきらめずに「ジェファーソン見ていなさい」と独りごちるモーラのたくましさにアイルランド女の本質を見るような感じにさせられます。実にうまい描き方だと思います。ちょっとステレオタイプにとらえすぎているような気もしますが,それをうまく利用して物語を薦めていく作者の手法は素晴らしいと思います。ついにアリフォルニアに乗り込んでいくモーラ。さてその結末は・・・。読み始めからどんどん引き込まれて行ってしまう傑作です。オススメ!


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