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苦いレッスン [ペニー・ジョーダン]

SHALOCKMEMO1003
苦いレッスン Past Passion 1991」
ペニー・ジョーダン 原 淳子





2011年12月31日65歳という若すぎる死を迎えたペニー・ジョーダンですが,本名のペネロープという名前にふさわしいシルバーブロンドの髪に若い頃はほっそりした体格で年齢を重ねてもその大きな目とバランスの取れた顔立ちで笑顔の素敵な作家だったと思います。多くの作品を発表し,新作が読めなくなったのが残念ですが多作家であり,その全作品を読むことなど自分の残された人生ではとうてい無理ですが,ヒーロー,ヒロインへのいつも温かい眼差しと多くの成長の物語をいつも楽しみに読んでいます。本作は原題は「過去の情熱」,いかにもロマンスらしさがあふれるタイトルですが,ヒロインの成長譚でもあります。8年前,恋人に裏切られた腹いせにどぎつい化粧をしてパーティに出かけそこで出会った見知らぬ男性と一夜の関係を持ってしまったニコラ。その後悔からその後は決して女性として目立つ服装はせず,男性恐怖症に近い状態で過ごしてきました。建設会社の社長秘書として,単なる秘書以上に仕事に没頭してきたニコラ・リントン。そんなニコラのボスが息子を亡くすという不幸に見舞われてすっかり事業への興味を失い,新しいボスがやってきます。それが,8年前自分の恥だと想い続けてきた男性マット・ハントでした。すっかり様相を変え,仕事一筋でやってきた自分をどうか思い出さないで欲しいと願いつつも,未だにちょっとでも身体に触れられただけでマットへの思いを募らせてしまうニコラに,マットはかつて出会った女性であることには気づく様子もなく,あくまで会社のスタッフとして接してくれていますが,単なる秘書以上に大切に接してくれていることに戸惑いと期待を覚えています。実は8年前もティーンエイジャーの妹3人がいて,ニコラに出会ったときも妹たちと同年代のニコラがなにかトラブルを抱えてやけになっていることを見抜き,酔いを覚ますために自分のフラットに連れて行っただけであることを言わずじまいでした。すっかり一夜を共にしたと勘違いしてしまった,ニコラにちょっとお灸を据えるためにワザと関係があったように仄めかしたマットだったのです。邦題の「苦いレッスン」はそのことを指したタイトルです。その言葉が8年間もニコラを苦しめ続け男性と正常な関係が築けない心の傷を残してしまったことをマットが知るのは,物語の最終場面でした。それも8年前にニコラを裏切った当の本人と会社関係の夕食会で偶然出逢ってそれをばらされてしまうという,最悪のシナリオの中で起こります。
男性の欲望に過敏すぎるほど罪悪感をもつニコラ。そしてマットへの愛を8年間も持ち続ける純な気持ち,そしてマットもまた,捜していたニコラとすでに出会い,電流を感じていたことが8年間自分の中に埋もれていた感情であったことに気づくなど,ちょっとあり得ないほど初心な設定ではありますが,読者を夢のような純愛に引き込む設定でもあります。約四半世紀近く前の作品ですが,この当時ですらおそらく珍しいほど初心なカップルだったと言えるでしょう。思わず微笑まざるを得ない愛らしい作品です。


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