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あなたのいる食卓 [ベティ・ニールズ]

SHALOCKMEMO1016
あなたのいる食卓 A Gentle Awakening 1987」
ベティ・ニールズ 永幡みちこ





ベティ・ニールズの復刻版イマージュ本です。89年にハーレクイン・ロマンスで初訳が出されたもの,ベティ・ニールズ選集の第2巻です。いつものようにイギリスとオランダが舞台になり,ヒーローは小児科医です。今回ヒロインはヒーローのウィリアム・セドリー(オランダ語ではウィレムでしょうが)の家のコック,フロリナ・ペインです。母方の親戚がオランダにたくさんいるフロリナですし,名前自体もオランダ風ですが,フロリナの父はまだ50代なのにすっかり仕事を引退し心臓病の療養中,でも医者からはもうすっかり直っていると言われているのに働きにも出ずにフロリナの稼ぎで生活している怠け者です。ニールズの作品ではいつも善人と悪人がはっきりしていて,わかりやすく,その分読んでいて安心感があるものの,ドキドキ感が少なく,続けて読むには物足りなさを感じてしまうのが少々難です。ウィリアムの車はシルバーブルーのベントレー。羽を広げた鳥と中央にBのマークがオーナメントになっている車です。1919年創業ですから100年ちかい歴史を持ちますが,1931年からはロールス・ロイス,1998年からはフォルクスワーゲンの傘下にあるようです。原作が1987年ですから当時ベントレーはロールス・ロイスが国有化されたのに伴い,ヴィッカーズに売却されたようです。当時の新型車はミュルザンヌかカマルグあたりでしょうか。いずれにしても高級車であったことは想像に難くありません。
ちょっと優柔不断なウィリアム。前妻との間の一人娘ポリーンは愛らしい少女でパパ大好き。でも仕事場がロンドンにあるウィリアムは週末だけこの田舎の村のウィール・ハウス(水車屋敷)に帰ってくるという生活。屋敷には少女とナニーだけが住んでいます。その料理人になることになったフロリナですが,少女,ナニーともにすぐ仲良くなります。そして自分に親切にしてくれるウィリアムに恋をしてしまいますが,所詮は雇い主と料理人の関係。身分違いの淡い思い,特に目立つほどの美人でもなくブロンドでもない田舎の女性であるフロリナですから,ウィリアムに想ってもらおうなどとは思ってもいません。でも親切に声を掛けてもらったり,作った料理を褒めてもらったりするだけで舞い上がってしまうフロリナでした。そしてウィリアムの婚約者はとびきりゴージャスな美女ワンダ。ウィリアムがワンダを連れてくる度に表面的にはおとなしく雇い人としての対応に戻りますが,ポリーンもナニーも,ロンドンの屋敷の執事ジョリー夫妻ですら,このワンダを嫌っていることを隠そうとしません。ワンダが家事に全く興味を示さず,結婚したら娘を寄宿学校に追いやり,フロリナとナニーを即刻解雇すると公言するに至っては,敵対せざるを得ないことは目に見えています。しかし彼女と結婚するかどうかはウィリアムの決めることで,自分には何も言う資格がないということはわきまえていました。数ヶ月の間に,ポリーンとナニーのはしか騒動や,逃げ出した飼い犬を追いかけて行ってしまったポリーンが脳しんとうを起こし,ウィリアムが助けに来るまで長い時間フロリナが少女と犬とともに森の中で立ち往生してしまったことなどいくつかの事件がありましたが,最も大きな出来事は,休暇で行ったオランダの伯母の娘の結婚式で出会った自信家の青年がフロリナを追いかけ回し,それを誤解したウィリアムとの間に感情的な食い違いが生じてしまったことでした。しかもワンダがそれを利用してフロリナに出ていくように仕向けたのですから始末に負えません。でもじっとそれに耐えて何も弁解しようとしないフロリナ。やがて悲しい別れを決意したフロリナはウィリアムから数日間家を離れることを言い渡されてしまいます。しかしそれがウィリアムの計略であることはフロリナには思いもよらない結末に結びついていくのです。最後のどんでん返しが見事な作品です。


タグ:イマージュ
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