嘘と秘密とスキャンダル [キャロル・モーティマー]
SHALOCKMEMO1023
「嘘と秘密とスキャンダル Prince's Pleasure
(華麗なる兄弟たち 2) 2005」
キャロル・モーティマー 竹中町子
シリーズ第2弾は次男ザックのロマンスです。前作でニックとジンクスのロマンスをマスコミから隠すためニックにレポーターの注意をそらすことを依頼されたニック。そのレポーター,タイラーと1週間の24時間体制での密着取材を受け入れますが,本当はザックはこれに納得はしていませんでした。迷彩服のようなズボンをはき,小柄で髪をポニーテールにしているタイラーは,普段ゴージャスな女優やモデルを見慣れているザックにとっては特にこれといった注意を引く存在ではないはずですが,なにか他の女性とは違った魅力が感じられます。タイラーとは何者なのか? レポーター側からは自分はこれまでも注目を集められる存在で,いろいろなことを知られているのに,自分はタイラーのことは何一つ知らない。しかもいろいろ聞いてもいつも注意を他のことにそらされてしまい,質問には答えてもらえません。ザックはアメリカの知り合いにタイラー・ウッドについて調査してもらいますが,特に目立った記事は発見されません。ますますタイラーに対する謎が深まるばかりです。ちょっとした挨拶程度のキスにも二人の間に燃え上がる炎を感じざるを得ません。自分を取材する側のレポーターとの深い関係など,想定することすらふさわしくありませんが,それでも,タイラーは過度な取材からザックを守るかのような行動を取るのでした。編集主任に聞いても,タイラーのことは詳しくは教えてくれません。そんな間も,連日暴露記事のような物が新聞に出てしまうのでした。タイラーは明らかに嘘をついているのですが,そうではないような気もします。すっかりタイラーに引き寄せられてしまうザック。なにより一介のレポーターがブランド物のドレスを着てしかも一流デザイナーとも知り合い,そしてアメリカの有名な経済人との交流もあるようです。ついに,タイラーの本名が明らかになります。タイラー・ウッドではなく,タイラー・ハーウッドという富豪の一人娘。しかしなぜ富豪の娘がニューヨークを離れ,イギリスで一介のレポーターとして下町のアパートで貧しい暮らしをしているのか。ますます謎は深まります。嘘をついていたタイラーにその事実を突きつけても謎は解けません。一方タイラーも新聞に暴露記事や写真を載せた犯人を追っていきます。初めは前作で不適切な行動を取って社を解雇されたジェーン・モロー死か考えられなかったのですが,コンビを組んでいたカメラマンのペリーの自分に対するストーカー的行為がエスカレートしてきます。いつまでもしつこく自分に迫るペリーに困惑しているとき,ザックが助けてくれるのでした。ついに秘密を明かさざるを得なくなるタイラー。秘密を抱え,嘘をついていたタイラーにザックは始め腹を立てますが,タイラーを忘れることなど出来なくなっていることにザックは気付きます。そしてタイラーがザックに告白したのは・・・。
仕事一筋のように見えて,良心を捨ててまで取材をすることの出来ないタイラーが,新たな仕事として提案されたのは本を書くことでした。父親からの自立を目指してイギリスに渡ったタイラーの成長譚であり,ザックもまた過去を乗り越え,人を愛することができるようになる大人へ過程を描いた変化に富んだ作品です。前作のヒロイン,ジンクスに引き続き,タイラーもまた魅力あふれるヒロインです。
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