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ハイランドの政略結婚 [マヤ・バンクス]

SHALOCKMEMO1026
ハイランドの政略結婚 Never Seduce a Scot
( Montgomerys and Armstrongs 1 ) 2012」
マヤ・バンクス 草鹿佐恵子





 13世紀前半のスコットランド。敵対する二つの氏族モンゴメリーとアームストロング。イングランドとの和解が成立し,スコットランド同士の緊張関係を解消するためスコットランド王アレグザンダー二世王はモンゴメリー家の族長グレアムとアームストロング家の族長の娘エヴリンとの結婚を画策します。白羽の矢を立てられたエヴリンは数年前に落馬事故以来,頭に変調を来した娘として一族の外部にまで噂が広まっていた娘でした。そんな女性と結婚しなければならないことになったグレアム始めモンゴメリー一族は怒り心頭。そしてグレアムたちがアームストロングの城にやってきます。王自身は政務を理由にやってこず,代理人の伯爵をお目付役に寄越しただけです。城ではエヴリンの両親,息子であるエヴリンの兄たちとグレアム一行の間に一発触発の雰囲気があり,危うく剣を抜き合う場面すらありますが,伯爵の仲裁で何とか事態は収まります。さてエヴリンは,グレアムを城の大広間で見かけたとき,何故か低い声の響きが聞こえるような気がして,その響きがとても心地よく感じます。実はエヴリンは耳が聞こえなくなっていただけでした。そして,相手の唇の動きである程度の話の内容は理解できるのでした。しかし呼びかけられても気がつかずにいたりしたため,頭がおかしいと思われてきたのです。そして以前婚約者のイアン・マクヒューが結婚したら自分を思うがままに傷つけるとささやかれて,それを恐れ,頭がおかしいと思われるままにしておけば婚約を解消されると考え,真実を隠し続けていたのです。案の定,婚約は解消され,マクヒュー一族との同盟は解消されていたのでした。グレアムの案内された部屋に前もって待機していたエヴリン。驚いたグレアムは女性がそこにいたことと,間近で見るエヴリンの美しさに二重の意味で驚きを隠せません。この時,エヴリンはグレアムとの結婚を決意していたのでした。グレアム側には例え結婚相手がだれであろうと王の命令を拒めば一族が反逆者として懲罰を受けることが分かっていたので,断る理由はありません。しかしエヴリンの美しさに気付いてからは,自身としてはなんとか一族にエヴリンを馴染ませて結婚を完成させたいとい気持ちが強まります。翌日結婚式が行われ,エヴリンはグレアムたちに連れられてモンゴメリーの城に向かいます。落馬事故以来馬を見ることもにおいをかぐことすら恐怖になっていたため,結納品などの物品を運ぶ荷車に乗って旅をするのでした。隣接する領地ですので旅はそれほどかからず,モンゴメリーの城にやってきたエヴリンですが,予想していた以上に一族の人々の対応は冷たいものでした。しかし,グレアムの妹ロリーが始めにエヴリンと仲良くなり,グレアムの弟たちも兄を支持するという立場からエヴリンを大切にし始めます。面と向かって悪口を言う人たちもいましたが最も最悪だったのは女性たちでした。自分が命じれば何とか一族の人たちもエヴリンを受け入れてくれるだろうと考えていたグレアムはある事件以来それは甘い考えであると思うようになります。女性たちはグレアムが見ていないところで悪巧みをしてエヴリンを苦しめていたのです。一族全てを集めて強い口調で反省を促すグレアム。エヴリンの難聴の病を告げ,決して頭が変なわけではないという説明と,自分の妻として,一族の女主人としてエヴリンに相応の尊敬は払わなければ反逆者と見なすという強い口調にほとんどのものはそれを受け入れ,グレアムの側に立つ,つまりエヴリンの側に立つことを宣言したのでした。しかし裏切られ,騙されたことを恥じたエヴリンは両親の下に返りたいとつぶやき,姿が見えなくなります。城の中は元よりあちこちを探し回ったあげくにグレアムはエヴリンを見つけますが,その時巡視の目を縫って侵入してきた騎士がエヴリンとグレアムを襲います。グレアムは肩に矢を負い,倒れたときに頭を打って気を失ってしまいます。大声で叫んでエヴリンは何とか騎士を追い払いますが周囲にモンゴメリーの一族は誰もいませんでした。恐怖を押してエヴリンはグレアムの馬に飛び乗り城に駆け戻って助けを求めます。グレアムのいる場所までも一度弟たちを案内し,城に運ばれたグレアムから一瞬も離れることなく懸命に看病をして4日間も飲まず食わず,睡眠も取らずにひたすらグレアムの世話をし続けるエヴリンに,モンゴメリーの人たちは敬意と二人の深い愛情に気付くのでした。グレアムが目覚め,エヴリンを休ませるよう命じて初めてエヴリンは休憩を取り,丸二日間も昏睡状態になっていきます。今度はグレアムがエヴリンをしっかり抱きしめ面倒を見ることになるのでした。もはや二人を分け隔てようと思うものは誰もいなくなりました。と,思いきや,グレアムを襲ったのはアームストロングの由緒ある剣をもった人であることをエヴリンから聞き,グレアムたちはどう対応するべきか話し合い,とにかく真偽を確かめるためにエヴリンの父に手紙を送ることにします。どうも他のものが仕組んだ企みではないかと気付いたからです。そこに大軍を引き連れたエヴリンの父たちがやってきました。事情を説明する前に,エヴリンは何者かに連れ去られたことが報告され,かつてエヴリンに意地悪して城を追放された女性が自分がイアン・マクヒューの手引きをしたことを白状していたのでした。グレアムの説明で両方の軍がマクヒューの領地に向かうことになります。始めイアンの父はエヴリンがいないと主張するのですが場内を探索してもたしかにエヴリンの姿は見えません。このとき少年の姿をした女性がそっと地下牢を捜すようグレアムにささやくのでした。これが一体誰であったのかは最後まで明かされません。マクヒュー一族の中にも良心を持ったものがいたのか,あるいはシリーズの後の方で明らかになるのかは分かりませんが,グレアムは地下牢のさらに奥に隠された穴蔵の中で鎖につながれたエヴリンを見つけることが出来ます。この事件をとおして,アームストロングとモンゴメリーの因縁は解消され,まさにエヴリンによって積年の戦いが解消されていくのでした。第45章で傷ついたエヴリンを守ろうとするグレアムの姿,深い愛情と信頼に基づいた二人の姿には涙なしには読めません。ハンディキャップをものともせずに真の人の価値に気付いたグレアムと,そのグレアムに愛を教えたエヴリンの姿が本作の真のテーマです。今年読んだ作品の中で文句なしのベスト・ロマンス。一気読み間違いなしのオススメです。


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