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婚約指輪についた嘘 [マリーン・ラブレース]

SHALOCKMEMO1036
婚約指輪についた嘘 A Business Engagement
( Duchess Diaries 1 ) 2013」
マリーン・ラブレース 中野 恵





「公爵夫人の日記」シリーズの第1弾です。9月発売のシリーズ第3作「大公殿下と忘却の恋人」に関連して未読だった本作を読みました。なお,第2弾の「御曹子の傲慢なプロポーズ(SHALOCKMEMO786)」は既読です。本作と第2作はいわゆる姉妹編になります。グラフィック・デザイナーサラは祖母であり,シリーズの語り手的存在でもあるシャーロット・セント・セバスチャンの世話をしながら生活しています。自堕落で問題児でもある妹ジーナに手を焼かせられながら早くに母を失ってジーナにとっては母親的役割も果たしていました。そんな彼女の勤める女性向け雑誌「ビガイル」では世界で最もセクシーな独身男性の特集を組み,その第3位になったのが航空宇宙企業のCEO,デヴォン・ハンターでした。シリーズ第1作である本作では,セント・セバスチャン一族に絡む不幸な過去の出来事が詳しく紹介されていますが,サラの本名はレディ・サラ・エリザベス・マリー=アデル・セント・セバスチャンという貴族の称号をもっています。領土を失った大公国カルレンブルクの大公の孫娘だったからです。大公位は国が失われてしまい,その後大公だったサラとジーナの両親が事故で亡くなって以来誰も継いでいないのですが,祖母のシャーロットは貴族の気位と圧倒的な存在感でアメリカの上流社会でも人望を集める人でした。サラのジーナの姉妹も小さいうちから「家柄が高貴な女は気品を保ってさえいれば,人生のあらゆる恩恵に浴することが出来る」という祖母の信条に沿って「私立の有名校に通い,音楽の個人レッスンを受け,ウォルドーフ・アストリア・ホテルでの舞踏会で社交界デビューを果たし,名門女子大であるスミス・カレッジを経てソルボンヌに留学」するという生活を送ってきたのですが,亡命貴族である祖母は迫害を逃れて亡命する際に持って出た大公家の貴重な宝石類を売って,孫たちの生活を支えてきたのでした。そのことを知らずに育ってきたサラですが,今や家の経済がかなり苦しい状況に陥っていることを知っていました。そんな時,「ビガイル」の編集長アレクシス・ダンヴァーズを訪れたのがデヴォンでした。かつて記事で自分が勝手に世界で最もセクシーな独身男性第3位と書かれたために,大口契約であるフランスの企業との契約に暗雲が立ちこめている,その責任を取って欲しいとねじ込んできたのでした。デヴォンは契約相手の経営者の妻エリーズに言い寄られて困っていたのです。応対したサラにデヴォンは自分と偽りの婚約者として一緒にパリに行って欲しいというのでした。見返りとして経済的に困っているセント・セバスチャン家の借金を負担しようというのです。最近入院して治療中の祖母の健康や,妹のジーナがまたまた問題を起こしていることなどからデヴォンの提案を飲まざるを得なくなったサラ。そしてなによりも噂に違わぬデヴォンのセクシーさにサラ自身が惹かれていることを意識せざるを得なかったからです。さらに編集長のアレクシスから二人が婚約すれば絶好の特集記事が組め,もしそれを断ればサラを解雇せざるを得なくなると脅かされたからです。かつて留学生活を送ったパリの地で,デヴォンの婚約者として過ごすことに戸惑いとデヴォンに惹かれる自分の気持ちにブレーキをかけられるか迷いながらも,サラとデヴォンはパリに向かいます。偽りの婚約でありますがジーナを個人的に知るデヴォンはジーナとは全く異なるサラの慎み深く優しい人柄,そして派手ではないが気品のある美しさに惹かれる自分に驚いていました。パリでジャン・ジャック・ジロール,エリーズ夫妻に会ったサラは,エリーズの歯に衣を着せない話題とデヴォンに対する思わせぶりな行動に嫉妬している自分に気付きます。そしてデヴォンにどうしようもなく惹かれている自分に気付くのでした。二人は恋の町パリですっかり偽りの婚約ではなく本物の婚約者のように振る舞ってしまいます。「ビガイル」のパリ支社で,サラはアレクシスがニューヨークでの方針とは正反対に,二人の写真を撮る専属のカメラマンが用意されているのを知って驚きます。大切な契約をまとめるために偽りの婚約者になったのに,このパリでの行動が雑誌に載ってしまえばデヴォンが進めようとしている契約がまとまらない可能性があるからです。そのことをデヴォンに話す前に,二人がパーティのために訪れたホテルから出ようとしたところで二人に向けられたフラッシュが光ります。これがデヴォンの怒りを買ってしまうのですが,サラがアレクシスに抗議し,なんとか問題は解決したかのように思われましたが,さらにエリーズの元愛人のアンリ・ルフェーヴルがサラに邪な思いを抱き,サラに邪険にされるとその仕返しにサラを身代金目的で誘拐しようとします。緊急事態に気付いたデヴォンによってこの事件は未遂に終わりますが,その後警察の事情聴取などがあり,パリを離れられなくなります。契約成立によって二人の偽りの婚約は終わるはずでしたが,サラはデヴォンを失うことに大きな悲しみを感じていました。そんな時音信不通だった妹のジーナから連絡が入ります。大きなトラブルに見舞われスイスにいるというのです。デヴォンに詳細を告げる間もなくルツェルンに駆けつけるサラ。そしてジーナの妊娠が明らかになります。この相手が第2作のヒーローになるジャック・ハリス・メイスン3世です。ジーナとサラのいるホテルで顔を合わせたデヴォンとメイスン。いきなりメイスンを殴りつけるデヴォン。二人が間もなく親友になっていくのはストーリーの面白さです。そして互いの愛に気付いていくサラとデヴォン。
二人の孫娘の行く末を案じていた元大公夫人シャーロットはサラの幸せをかみしめるのでした。エピローグは再びシャーロットの日記に戻ります。この静かで幸せな幕切れは,余韻と次作への期待を感じさせ,まるでヒストリカルを読んでいるかのような充実感を味わえる秀作です。オススメのシリーズ。


タグ:ディザイア
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