SSブログ

こぼれ落ちた月日 [エリザベス・パワー]

SHALOCKMEMO1038
こぼれ落ちた月日 Ruthless Reunion 2006」
エリザベス・パワー 秋元由紀子





「消せない一夜の宝物(SHALOCKMEMO1030)を読んで,エリザベス・パワーをもう少し読みたいなと思い本作を手にしてみました。ブリストル生まれで現在もこの町で暮らしているという作者の骨太なストーリー展開が気に入りました。原題は「無情な再会の集い」とでもなるのでしょうか。バミューダのホテルで開かれているパーティで出会ったカメラマンのサンチア・スティーヴンスと法廷弁護士のアレックス・セイバー。アレックスはカメラを構えているサンチアを一目見てその美貌に惹かれます。「すらりと背が高く,年齢は20代前半。たっぷりした漆黒の髪と豊かな胸,自信に満ちた冷静な女性」と一目で見て取ったアレックスは「天使の顔,いや妖精の顔,磁器を思わせる肌,弧を描く眉,黒く長いまつげに縁取られた蠱惑的な切れ長の目」の彼女と二人だけになったような錯覚に陥ります。彼女の方もカメラを下げてアレックスの方を呆然と見つめています。サンチアもまた「バミューダの太陽で焼けた肌に目を見張るほどの端正な容姿と全身から発散される権威の香り」をアレックスに感じ,背筋がぞくっとしてしまいます。「一杯おごらせてもらえるかな?」と声を掛けるアレックスの言葉を断り,「もう一杯いかがですか?」と言い換えさせてしまうサンチアの美しさにアレックスはこの時から運命を感じ取ったのかもしれません。そして彼女の方から後ろを振り返りもせずエレベーターに乗り込み,アレックスが割り込んできても断りませんでした。エレベーターの中からすでに求め合う二人。ベッドを共にした後で「36歳の法廷弁護士の身で責任感と常識を兼ね備えているはずなのに,彼女に対する欲求で,そんなものは跡形もなくなった」と状況に戸惑うアレックス,そしてサンチアもまた本来新婚旅行で訪れるはずだったバミューダで見知らぬ男性と一夜の関係を結んでしまうことなど考えもしなかったことに呆然としてしまいます。
こんな幕開けで始まる本作ですが,冒頭ですでに読者の心をしっかりと掴んでしまう見事な筆力です。ここからは現在と過去が同時進行していくストーリー展開です。名前も告げずに逃げるようにバミューダを去り,イギリスに戻ったサンチアは,陪審員を求められ,市民としての責任という一般的な義務感から法定で宣誓しようとしていたところを被告人側弁護士から忌避権行使の申し立てを受けます。この弁護士こそアレックスだったのです。「裁判の当事者とかかわりがある者は陪審員になれないという規則になれない」と言われ,サンチアは驚きます。実はサンチアはこの時事故により記憶を失っていたのでした。アレックスはサンチアの記憶を取り戻す手伝いをしようと申し出ます。サンチアはロンドンで庭付きのアパートで暮らしていますが,隣人で30歳の離婚経験者ジリー・ボストンと親しくしていました。アレックスを見かけたジリーはゴージャスな男性にサンチアが怖れを抱いているのを慰めます。そして二人の再会が初めて会った男女のように少しずつ前に進んでいく形で進んでいくのですが,それは過去への逆行でもありました。アレックスはサンチアの記憶回復を急ごうとはしませんでした。記憶が戻りかけるとサンチアが苦しむことが分かったからです。バミューダからサンチアが去った後,アレックスはサンチアのことを調べたのでした。しかしサンチアの勤務先を訪ねたアレックスにサンチアは冷たく当たります。それはサンチアも動揺するアレックスには知られたくなかった秘密があったからでした。あの夜サンチアはアレックスの子供を身ごもったのでした。そしてその子を失ってしまったことを知ったとき,茫然自失で道路に飛びだし事故に遭ったのでした。この出来事に関係したことがでてくるとサンチアは拒絶反応を示すのでした。悲しい出来事から自分を守るためにサンチアの脳が命じるからでした。このような心因性の記憶障害と身体的反応が克明に描かれていきます。休暇を兼ねた出張で再びバミューダを訪れるアレックスはサンチアを誘います。記憶を取り戻す可能性を考え,サンチアはこの申し出を受けます。そしてアレックスの友人である神経科医と面接をしたりしながらのんびりとバミューダのアレックスの自宅で過ごすうちに,嵐に出会ったり,元婚約者の裏切りなどを思い出していきます。そして全ての記憶が戻ったのでした。元婚約者こそ,アレックスの腹違いの弟だったのです。この不思議な出会いを運命と言うのでしょうか。アレックスもその事実を知っていながらサンチアの苦しみを理解していくことができるのでしょうか。記憶が戻ったサンチアのもとにまたまた大きな障害が現れます。アレックスを狙うヤズミンという女性の出現です。かつてヤズミンはアレックスとサンチアの幸せを邪魔したのでした。それが事故の大きな原因となっていたのですがバミューダに再びヤズミンが現れたのでした。次々に障害が現れるアレックスとサンチアの関係ですが,運命の相手とは障害が多くそれを乗り越えることでますます愛が深まるドラマチックな展開になっていきます。「高等法院の弁護士を誘惑した罪がどの程度か知ってるかい?」「終身刑でしょうか閣下。」「お行儀良くしていたら減刑を認めていただけますか?」「行儀良くしていたらその分長く閉じ込めておく」という終末の会話がとてもしゃれている作品です。


タグ:ロマンス
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。

この広告は180日新規投稿のないブログに表示されます