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氷のシークと情熱の花嫁 [オリヴィア・ゲイツ]

SHALOCKMEMO1053
氷のシークと情熱の花嫁 To Touch a Sheikh
ゾハイドの宝石 3) 2011」
オリヴィア・ゲイツ 富永佐知子





「ゾハイドの宝石」の最終巻です。邦訳では「ゾハイドの宝石」となっていますが,原題シリーズ名は「ゾハイドの誇り」です。もちろん「誇り」は宝石のことですが,王位継承に不可分な貴重な伝説的宝石類を指しています。さて,本作のヒロインもまた,度肝を抜く素敵なヒロインです。冷徹で容赦ないと恐れられているアール・シャラーン家の長男アムハド。全く愛に無縁のように思えるアムハドをどんな風に恋に落とすのか作者の腕の見せ所でしたが,意外や意外,冒頭からアムハドに恋している女性を登場させてしまったではありませんか。その名はマラム・アール・ワケド。宝石類の本物を盗んだ黒幕と思われているユスフ・アール・ワケドの一人娘です。宝石のすり替え事件などは全く知らないマラムは,二度の結婚の失敗の後アメリカからゾハイドに帰ってきたところでした。罪を暴くためユスフの誘拐を企てたアムハドは,娘が来たことで若干の計画の修正を迫られます。とりあえず娘を身代わりに砂漠の中の隠れ家にたどり着いたとき,周囲は砂嵐で50センチ先も見えないほどでした。それから数日間は砂嵐の中に二人きりで閉じ込められる状態になります。もちろん携帯電話などの連絡手段も役に立ちません。そしてこの間に冷たかったアムハドの心はマラムによって完全に和らげられ,もう二人とも離れることができないところまで高まっていきました。近くの洞窟での素晴らしいひとときも二人の思い出になります。ところが砂嵐がやみ,アムハドの携帯の着信をとったマラムは,父ユスフのアムハドを非難する言葉で,自分が誘拐されたことやアムハドが初めから計画していたことを知り,完全にアムハドに信頼を裏切られた思いがするのでした。父の政治にたいするコンサルタントとして働いているマラムの頭の良さ,思いやりと楽天的な明るさ,そしてアムハドに対する愛の深さは,報道されているマラムとは全く異なった姿でした。もちろん美しさも,さらにいくら言葉で虐めてもすぐに言い返してくる気の強さは,まさに皇太子妃にふさわしい能力だと言ってもいいでしょう。そして裏切られて飛びだしたマラムが父を説得し宝石類を返すと宣言するのですが,アムハドと同じく自分を利用していた父に対しても容赦なくゾハイドと隣国の平和を心配するマラムでした。そしてユスフによってついに真犯人が明らかにされます。シリーズの最も盛り上がりを見せるところですが,事後の後始末にこそ本作の,そして作者の腕の見せ所が隠されています。エピローグは1年半後。アムハドとマラムは相変わらず互いを虐め合っているかのような軽口を言い合いながら,互いの目の中には愛があふれていることを示す暖かい締めくくりをしています。第1作のヒロイン,ヨハラ,第2作のタリア・ジャスミン,そして本作のマラムと超個性的な3人のヒロインに共通しているのは,自立するだけの能力を持っていながらも愛する人の幸せを優先する愛にあふれた女性たちだということです。
本作では名前の意味が少しですが語られます。マラムは高嶺の花,ハラム(邪悪)とワザと間違えたりします。アムハドは「最も輝かしい」ですがアブガド(意地悪)などと言われたりします。こんなだじゃれめいた二人の会話や,アラビアン・ナイトのストーリーを皮肉った話しなど,アラビア語を知らなくても楽しめる話題が満載で,実に面白い作品に仕上がっています。


タグ:ディザイア
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