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流砂の獅子 [オリヴィア・ゲイツ]

SHALOCKMEMO1056
流砂の獅子 The Desert King
ジュダールの王冠 3) 2008」
オリヴィア・ゲイツ 杉本ユミ





本シリーズの英語版シルエット・ディザイアの表紙は3作ともヒーロー,ヒロインの素敵な絵が描かれていますが,そのエキゾチックで美男/美女の二人の姿は,往年の武部本一郎画伯の描いたヒロイック・スペース・オペラ「火星シリーズ」や「金星シリーズ」などと同じ色調,似た画風で描かれていて,とても興味深いと思いました。ちょっと検索してみると,IPAD用のデジタル・コンテンツとして画集が出されているようです。残念ながらSHALOCKはIPADを使っていないので購入は断念しましたが・・・。そして本シリーズのヒロインたちもデジャー・ソリスのように嫋やかな美女でありながら,しっかりと芯を持ち,どんな困難にも立ち向かっていく気骨と,そして愛を貫いていこうとする感情豊かな女性たちです。と同時に,凜とした貴族的な気高さというものも持ち合わせているのを感じました。
さて,本作はシリーズ最終巻ということで,ジュダールの王冠の行方が誰の手に・・・という解決編でもあります。それが原題の「The Desert King」というタイトルに現れています。そして,前作で驚愕の事実が判明したファラの妹的存在のアリーヤがヒロインとなり,尊大で頑固なカマルがもともとそうだったわけではなく,いつから,どんな理由でそうなったのかが明らかにされています。ちょっと考えれば女々しいと思われるような傷つきやすさをもった青年でもあったようです。そしてアリーヤの両親,実父,実母,養父母など複雑な家族関係とジュダールとゾハイドの関係修復にかかわる政治的,民族的問題の解決編にもなっています。
シリーズ3作の中では,やはりなんと言っても第2作目のファラ(喜びという意味)がもっともヒロインとしては惹かれますが,本作のアリーヤもまた,障害を持った子供時代を過ごし,それが誤診であったことなどが明かされ,精神医学の難しさとそれにより不幸になる可能性が否定できないという社会問題も孕んでいるのが,作者としての本作の読ませ方の特徴だろうと思います。作中,すこし難しい言い回しや議論などが随所に散見され,ロマンス小説の中にこれほど社会的な問題を含んだ作品もあまりないだろうなと思わせるぐらい,作者の医学的見識の高さや,アラブ世界独特の価値観などが克明に描かれている重厚な作品だろうとも思います。結婚披露宴でカマルとアリーヤが剣を交え合う部分などは読者の想像を超え,あたかも時代劇ドラマを見ているかのような真に迫った迫力が感じられました。蓋し傑作の一作と言えると思います。


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