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伯爵に拾われた娘 [ヘレン・ディクソン]

SHALOCKMEMO1063
伯爵に拾われた娘 The Earl and the Pickpocket 2005」
ヘレン・ディクソン 杉本ユミ





原題は「伯爵と巾着切り」。時代は1770年のロンドン。18世紀後半のロンドンの下町の悲惨さが結構細かく描かれています。タップロー伯爵の爵位を受け継いだばかりのアダム・ライクロフトは,画家として才能を発揮し,王立アカデミーで個展を開けるほどの腕前ですが,従兄弟の前伯爵が,殺人を含め暴力で数多くの罪を犯したまま罰せられずに心臓発作で亡くなってしまい,その妹の生んだ片足に障害のある一人息子がサーカス一座に売られてしまったため,ロンドンの下町を中心に捜索を続けていました。そんなときふと助けた少年が,実は絶世の美女であることは後に気付くのです。以前から親交のあったかつての伯爵領の家政婦で,今はロンドンで高級売春店を経営するドリー・ドリンクウォーター(いかにも水商売という苗字ですが・・・)のもとに少年を連れて行きます。少年の真の姿は,父亡き後,叔父が借金返済のために嫁がせようとした相手が前タップロー伯爵のサイラス・クリフォード,そのサイラスとの結婚を逃れるために出奔し少年の姿に身をやつしてロンドンで暮らしていたヒロインのエロイーズ(エドウィナ)・マーチャントだったのです。ドリンクウォーター夫人の元で,従業員のハリエットらに世話を受け,アダムはエドウィナを自宅にかくまうことにします。エドウィナの雇い主であり,下町のボスであるジャック・ピアスの元に戻ることが難しいことがわかったからでした。そして短い髪ながらも入浴を済ませたエド(エドウィナ)の姿を見たアダムは,モデルとしてのエドウィナの美しさから目を離すことができなくなります。それから1カ月にわたるエドウィナをモデルにしたアダムの代表作の制作が始まります。アダムがエドウィナに惹かれたようにエドウィナもまた男らしくハンサムなアダムの魅力に惹かれていきます。家を出奔しロンドンに来る途中で持っていた蓄えを奪われたエドウィナはアダムのモデルとしての稼ぎをもとに,フランスの母方の伯母を頼っていこうと考えていました。そして絵が完成し,フランスへ行こうとしたエドウィナをアダムは引き留めます。エドウィナの身分や出身を聞き出せず,とりあえず一緒に住みたいというアダムに対して,領地の管理をする2週間の間ロンドンで待っていて欲しいと頼み込むアダム。そして二人の間には離れがたい気持ちを抑えることができずに一夜を共にします。その結果エドウィナは妊娠し,いよいよアダムもエドウィナとの結婚を考えますが,その時,出奔の理由を告げられたアダムはエドウィナが恨む貴族こそ前伯爵であることを知ります。それをエドウィナに明かしてしまえば,きっとエドウィナは去ってしまうだろうと考えたアダム。とりあえず領地から戻ってくるまで待っていて欲しいというしかありませんでした。
そして,叔父の元に一時帰ることになったエドウィナは前伯爵のサイラスの死を知ります。そこに現れるのがジャック・ピアスでした。なかなか前途多難なエドウィナの未来ですが,ジャックの口から驚愕の事実を聞かされます。伯爵位を継いだのがアダムであるという事実を・・・。騙されていたことに気付くエドウィナですがすでにアダムの子供を身ごもっている自分にはアダムを信じるしか道は残されていません。そして行方不明になっているサイラスの妹の息子が父をサイラスによって殺められたことやその罪が明かされる前にサイラスが亡くなってしまったことを知り,エドウィナはロンドンに戻り,再び少年の姿でジャック・ピアスのねぐらの一つからトビー少年を連れ戻すことに成功するのです。妊婦がしかも自分の子供の母親になるエドウィナがそんな危険なことをしでかしたことに怒り心頭に発するアダムですが,同時にエドウィナの頑固で勇気あふれる行動にさらに愛を深めていくのでした。
ハッピーエンドに至るまでにはまだ若干の紆余曲折がありますが,二人の強い結びつきと信頼感がとても爽やかで,読後感が暖かくなる秀作です。エドウィナに拍手です。


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